一章 気付けば彼女たちは、さっきとは別の部屋にいた。 瑞希が連れてこられた場所は先程と大体同じ構図の教室だったのだが、ただ部屋中が凍っていたのだ。 まるで冷凍庫の中にいるような寒さのするその教室には、東を切り裂いたあの槍が氷漬けにされていた。 「さっき、上の階を覗いたときに氷が見えたから、もしやとおもってな…」 「確かに、この氷は会長のですが…一体何が…?」 「『一体なにが…』じゃないよ。」 声の方向に視線を向けると壁にもたれかかっている竜二の姿が。 「君たちが僕を置いてどっかいっちゃったから、おかげ様であの槍に追いかけまわされる羽目になってね。まぁその最中にたまたま撃退方法を見つけたんだよ」 「会長!!どこか怪我はありませんか?って、すごい顔真っ青じゃないですか!」 「うん…。ちょっと能力を使い過ぎただけだよ」 僕は瑞希を助けたのに置いていくなんて…とぶつぶつ文句を言う竜二。 そんな竜二に、瑞希は素直にごめんなさいと謝った。 一方で、当事者の東は 「おい。包帯男。あの槍には魔術が効かなかったはずだ。一体どうやって動きを止めたんだ?」 全く反省をしていなかった。 「……はは、僕なんかより槍の方が大事なんだ。僕は君のせいでこんな目にあったのに、君は心配の一言も謝罪の一言もないんだね。まぁ?別にぃ?僕なんかのただの学生の命なんかぁ?何百年も生きてる君にとってはぁそこら辺の雑草と同じ命なんだろうけどぉ僕だってねぇ?…」 「ああもう分かった!分かった!!私が謝ればいいのだろう!置いてってす・い・ま・せ・ん・で・し・た!」 暗いオーラ放ち始めた竜二になかばやけくそになりながら、謝罪の言葉をいう東。 しかし、 「ねぇ知ってる?謝って済めば警察なんかいらないんだよ?」 さらに暗いオーラを放つ竜二。どうやら心配の一言もほしいらしい。 東が瑞希に目でなんとかしてくれとサインを送るが、自業自得ですと言わんばかりに目をそらされた。 数分なにか言いたそうにもごもごしていたが、意を決したように竜二に近づき、 「…っその…けがとか…しなかったか」 竜二を覗きこむように軽く首を傾げて言った。 「…うん。大丈夫」 竜二は満足したのか、瑞希の胸元に顔を埋めた。 若干耳が赤くなっていたのは気のせいだろう。 ← 前へ → 次へ ⇒ 戻る ⇒ TOP |