一章 「………何故私の名を知っている?」 と呼ばれた魔術師は、竜二を睨めつけながら言った。 そんな彼女とは対称的に彼は、いつもの笑みを浮かべながら答えた。 「え?だって…君は『奇跡の魔女』と名高い魔術師じゃないか。ちょっと魔術に詳しい奴なら誰でも知っているさ。ね?瑞希?」 「そうですね…確かに貴方は魔術師の中では有名ですから。…顔は初めて見ましたけど」 そう言って、東を睨みつけている瑞希。手には武器の針が握られている。 そんな彼女を手で制し言葉を紡ぐ竜二。 「まぁまぁ、二人ともそんなに殺気だてないでよ。とりあえず、落ち着いて話し合おうよ。ね?」 「断る。何故、貴様の案に従わなければならない」 「そうです。話し合う事なんか何もないです」 竜二の案を即拒否する女性陣。 そんな彼女たちの対応に首を竦めながら、彼は言う。 「君たちの為だと思ったんだけどな…折角だし、東に…グッ」 最後まで言い終わる前に彼に掴みかかる東。 「貴様それはどういう…「それ以上会長に手を出せば頸動脈を貫きますよ。」」 そこへ、東の首元に針を当てる瑞希。 しばらく沈黙が続いた。 「…と…とりあえず…瑞希は…針置いて。僕は大丈夫だから。ね?…東も混乱しているのは分かるけど、騒ぎを大きくすると不利になるのは君の方だよ?」 「…ちっ。いいだろう。話だけは聞いてやる」 そう言って、東は竜二から離れ近くにあった椅子に座った。 「…会長には、あの人がなんで混乱していると分かったのですか?」 「え、瑞希には分からない?」 「分かりませんよ。なんで、触れられる事がそんなに驚く事なんですか。」 「…はぁ。瑞希にも納得させるには、そこから離さなくちゃいけないのか」 わざとらしく嫌味を言いつつ、た竜二はそのまま、説明し始めた。 「んーとね、東が不老不死なのは瑞希も知っているよね?」 「ええ。だから最強なのでしょ?」 「違うんだよ。不老不死ってのもあるけど、彼女が最強って言われる最大の理由はね―」 一呼吸置いて彼は言った。 「触れないんだよ。彼女はね、その不老不死の魔術の副作用で、人や物には一切触れる事が出来ない。簡単に言えば幽霊みたいなもんだよ。そこにいるけどそこにいない。それが、彼女が最強と言われる由縁さ」 「…確かに、そんな相手に、勝てる見込みなんてありませんね」 「…私の説明はいい。さっさとこの現象の説明をしてくれ」 「そうだったね。ごめんごめん。ねぇ東はさ、この街がなんて呼ばれているか知ってる?」 ← 前へ → 次へ ⇒ 戻る ⇒ TOP |