一章 恐る恐る足をどけて下を見た。 彼女の緋色の瞳が踏みつけた対象物を映す。 視界に入ったのは黒だった。 どこまで暗い、闇のような『黒』。 それは静かに上下と人が呼吸する時と同じ動きをしている。 その『黒』から見える五本に分かれているものは指のようだった。 『何か』は散乱した本の下敷きになっているようで、瑞希は正体を確かめるため本をどけた。 彼女の緋色の目が大きく見開き、『何か』の全身を捉える。 震える体を必死に抑えつけ、状況を見極めようと思考を巡らせるが、まともに機能しない。 再び、それを確かめようとして恐る恐る触る。 刹那 漆黒の瞳が緋色の瞳と重なった。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 本日二度目の瑞希の悲鳴が学校に響き渡った。 ← 前へ → 次へ ⇒ 戻る ⇒ TOP |