一章 「…ごめん、思い出せない。」 再び氷柱の陰に隠れる竜二。 そんな竜二に対して、瑞希はただ無表情にこう言った。 「生徒会」 「へ?」 「書類」 「…あ」 「未提出」 「…」 瑞希の言葉に全てを把握した竜二。 彼が弁解の言葉を口にする前に、更に瑞希は追い打ちをかけた。 「…最後まで言ってあげますよ、会長。貴方はこの一ヶ月間生徒会の仕事をさぼり、提出しなければならない書類、他校に出さなければならない手紙等々…溜りに溜まった仕事が山のようにあるんです。この意味分かります?」 「で…でも、何も今日やらなくてもいいと思うんだ。」 「あのですね…それらの締切がいつだかご存知ですか?月曜日ですよ?明日ですよ?何が悲しくてせっかくの日曜日に学校に行かないといけないんですか!一体誰のせいでしょうね?ねぇ?会・長?」 私の休日がまた潰れていく…とぶつぶつ言う瑞希の背には般若の像が見えていた。 普段瑞希はそこまでキレやすい性格ではないのだが、今日の彼女は爆発寸前である。 よっぽどストレスが溜まっているのだろう… どこか、他人事のようにそう感じた竜二である。 そんな謎の感傷に浸っていた竜二の耳に朝のニュースが流れ込んできた。 音のする方を見ると、電化製品屋の店頭に置いてあるテレビから聞こえていた。 『本日、十一月三日のニュースをお送り致します。』 ← 前へ → 次へ ⇒ 戻る ⇒ TOP |