一章 「…ってまた会長は、ベッドじゃなくて床で寝ているし」 彼は瑞希の兄が大・大・嫌いである。名前が会話中に出てくるだけでも不機嫌に成るほどである。 そんな彼がなぜ、その兄の部屋で暮らすことになったのか…それについては少々話が長くなるので、ここでは割愛させてもらう。 「ほら、起きてください。朝ですよ。ご飯出来ていますよ」 そう言って彼を揺り動かす瑞希。 しかし、一向に起きる気配がない。 「起きてください〜」 反応なし。 「お〜き〜て〜ください」 反応なし。 「お〜き〜て〜」 反応(以下略 「起きろって言っているだろうがぁぁぁぁ!!!」 そう叫んで、ちゃぶ台返しのごとく竜二を布団から追い出した。 「…僕の幼馴染はこんな凶暴なはずがない」 ぼそりと声が聞こえた先を見れば、左目を手で隠したまま横になって頬を膨らませている竜二の姿が見えた。 「いつまでも起きない会長が悪いです。私は悪くありません」 「むぅ…普通なら幼馴染の女の子に起こしてもらうというシチュエーションは、萌えの定番なものなのに…こんな起こし方じゃ全く萌えないよ。瑞希は幼馴染ってものを全然分かっていない…もう一回やり直し。」 気づけば再び布団の中に入っている竜二。 「意味が分かりません!てか、いつの間にか布団に戻っているし!!ほら!お き て く だ さ いぃぃぃぃ!!」 「だが断る!」 「だが断るじゃねぇぇぇぇよ!!」 ドッセイ!! 瑞希の怒鳴り声と背負い投げの音が黒月家にこだました。 ← 前へ → 次へ ⇒ 戻る ⇒ TOP |