イガグリ

一章

黒月 瑞希の朝は早い。

耳が痛くなるような音を上げ続けている目覚まし時計を止め、制服に着替えた。
「あら、早いわね。」
朝食を取る為下へ降りるとすでに起きていた母親に会う。
彼女の名は黒月
千鶴

ちづる
。名門黒月家の長女。瑞希と同じ銀色の髪、緋色の瞳ゆえに「緋色の魔女」と呼ばれる黒魔術師だ。
現在38歳。まだまだ現役である。
20の時、今の夫に一目惚れし実家抜けだして半ば強制的に婿養子にさせ入籍した経歴を持つ母である。
「朝食できているから冷めないうちに食べなさい。」
頭に紙袋をかぶっている男がそう言って出てきた。
彼の名は黒月


けん
。瑞希の父親である。現在40歳。
彼が付けている袋は、「あまりにもイケメンで顔を出していると女が群がって邪魔だし、貴方の顔は私だけが見ればいい」という、なんとも言い難い千鶴の我儘より付けられている。その為、娘の瑞希でさえ父の顔を一回も見た事がない。
「あっそうだわ。朝食食べる前に、竜二君呼んできなさい」
「あの人、まだ起きてないのですか。…はぁ。分かりました。今起こしてきます」
本名 櫻井(さくらい) 竜二(りゅうじ)。瑞希と同じ高校に通っており、そこの生徒会長を務めている青年である。中学の時も生徒会長を務めていた為、瑞希からは「会長」と呼ばれている。いわゆる幼馴染だ。
「入りますよ」
そう言って彼女は彼が眠っている部屋を開ける。
瑞希には双子の兄がいる。現在その兄は、全寮制の魔術学校に通っているため家にはいない。
そのかわり彼が兄の部屋を借りて居候している。
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