イガグリ

三章



ギィィ…と重い扉が開く音が響き渡る。
その扉の奥に大量の本の山が見える。
本来この場所は、倉橋家当主と幹部のみしか立ち入れない場所である。
しかし、その扉を開けたのは、次期当主の阿片である。
本来ならこの場所の存在さえも知らされていない。
彼が、この場所を見つけたのかは、彼の「サトリの目」の能力で父である現当主の記憶を垣間見た為であり、この場所に入れたのは、とある協力者のおかげである。

「ありがとうございます。伏見先生」

「ここは、学校じゃないのよ?先生は止めてよ。次期当主様?」

伏見先生―…伏見七花は、夜見桜ヶ丘高校の国語教師である。
専門は古典。先生の中でもトップの美女であり、授業も面白く、生徒から人気が高い。
そんな彼女のもう一つの顔が、倉橋家の幹部であり、知る人ぞ知る奇蹟の研究の第一人者でもある。
東が来る前から、黄泉桜が『奇蹟』だという事知っていた阿片だが、その効力や『人柱』については何も知らなかった。
正直、協力を願われた時、瑞希に頼まれたから渋々協力したのだ。
決して竜二や東の為ではない。
黄泉桜については、元々興味はあったからこの機に調べてみるのも悪くないと思った。それだけの事である。

ようするに、利害関係の一致である。

しかし、調べても黄泉桜関係の事は全然進展しなかった。
当主である父にも探りを入れてみたが、「お前は何も知らなくていい」と一点張りで何も分からなかった。 
そして記憶を覗いた時に知ったある事実。
もしも、父の記憶のあの記憶が実際行われるなら、自分は意地でも止めなければいけない。
その為にも伏見先生に協力してもらったのだから。

伏見先生は、用事があると言って鍵だけ手渡されて、その場を立ち去った。

「こりゃ…すごい量だな。先生曰く、右側の棚に黄泉桜についての本があるんだよな」

彼女に言われたところの棚には、様々なところから集められたと思われる『奇蹟』関連の本が多く並べられていた。
その量の多さに思わずあっけにとられてしまう。
しばらく、本のタイトルを眺めていた阿片だが、ある本で目に留まった。
本…と言っても今のようなきちんと製本ではなく、巻物…そんな感じのものだった。
それにはタイトルは無く、阿片は興味本位でその巻物を開いた。
読み進めていくうちに阿片顔から血の気が引いていく。


「………………………………なんだよ…これ」

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