とっておきの嘘




「フラン大好き!」

「あーそうですかー」

「好き!」

「ありがとうございますー」

「……」


流される。ことごとく。
チキンな私が頑張って告白していると言うのに、さっきからこの調子。
いい加減恥ずかしいを通り超して、悲しくなってきた。


「意味、分かってる?」

「分かってますよー」

「ライクじゃなくてラブの方だよ」

「だから分かりますからー」


じゃあなんか言ってよ!
ミーもですよ、とかごめんなさいとかあるじゃん!

それよりも自惚れていた自分が情けない。
絶対両思いだと思ってたのに。
くそ、もう恋なんてするものか。


「それで?」

「は?」

「え?」

「…え?」


何、どうしたの。
それでってなんの続きを促してるの。


「それだけを伝える為にわざわざ呼び出したんですかー?」

「…まあそうですが」

「本当に馬鹿ですねー」


カチンと来ました。
馬鹿ってなに?乙女の告白を馬鹿呼ばわり!?
もうなんでこんな男に惚れたんだよ私。


「もういいフランなんて大嫌い」

「好きだの嫌いだの、忙しい人ですねー」

「うるさい!もう触るな近寄るな!」

やばいもう泣きそう。
目から出て来るのは間違いなく塩分の入った水だ。
でもこいつの前で泣くのはプライドが許さなかった。気がついたら全速力でフランから逃亡を計っていた自分。


「畜生あのチビガエル!
もう嫌い!大嫌い!うわあああ!」


涙でグチャグチャになっているだろう顔を隠し、自室を目指して駆け抜ける。
すれ違う隊員達に好奇の目を向けられたけど気にしてられない。

ただ機械的に走った。


漫画やドラマなら、ここで追って来るんだよね。
そして仲直りしてイチャイチャするの。
今の私にとっては嫌み以外の何物でもない。

少し期待して後ろを見ても、フランの姿はなかった。


「(フランのバカ!果てろ!)」


少し前に合った右腕の人の台詞を借りて、思いっきり心の中でフランを殴った。
積み上がるフランA、フランBの遺体。


涙で霞む視界の先に、見慣れた扉が見えた。

私の部屋だ。



「何泣いてるんですかー」


ピタリと本能的に止まった足。
扉の向こう側からフランの声が聞こえた。
いや、そんな事があるわけない。

私は意を決して扉を開けた。


…視界いっぱいの緑。


「酷い顔ですねー」
「うっさい、見るな!」

「ミーが何かしましたー?」

私の涙を拭おうと伸ばされた手。
私はその手を叩くと、スクに負けない位の大声で言ってやった。


「人の告白を流すからでしょ!このタラシ!」

「タ…?」

「バーカバーカ!フランなんて一生独り身で居ればいいんだ!老後を寂しく終えればいいんだ!」


ぶわっと溢れた雫の止め方なんて分からない。
私はただ夢中で叫んでいた。


「…そんな事だったんですかー」

「そんな事って……んん!」


間もなくして塞がれた口。
何が起こってるか理解するのに、時間はかからなかった。

キス、されてる。

「…っはぁ」

「知ってますよー告白なんてされなくてもー。
て言うかミーは付き合ってるのかと思ってましたー」


さらりと、本当にさらりと告げたフランの言葉に絶句。
開いた口が閉じないのはこの事だ。



「まああんたはミーが嫌いらしいんですけどねー?」


そう言って私の頬にキスを落とすフランは間違いなく策士だ。



とっておきの嘘
(嫌いなわけないじゃん)(そう言った顔は林檎のように)








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