射る






フランは私を見ていることが多い、と思う。気がつけば近くにいて、私の方にじっと視線を向けてくる。

私はフランの目がきらいだった。何もかも見透かされるような、あのエメラルドの瞳で心臓をぐりぐり捕まれているような感じがするから。
…思いもしなかった。その目に捕えられていたなんて。


『フラン暑い…』

「んー?何ー」


べたべたくっついてくる彼をベッドの端へと押し返す。ていうかいつの間に入り込んだんだろうこの蛙。


『離れて。私くっつかれるのきらいだし』

「ツンデレなのもいいなー」


好きだなそういうとこー、とか言いながら懲りずに近づいてくる蛙。いつ誰がツンデレだなんて言った。
…控え目に寄ってくるところが可愛いだなんて死んでも言ってやらない。


「こっち向いてくださいよー」

『やだ向かない』

「冷たいなー夜はあんなに好きって言って可愛かったのにー…げろっ」


…そばにあったクッションを投げつけてやる。ばふん、っていい音した。ざまあみろ。

「こっち向いてくださいってばー」

『やだってばばかえる』

「こっち向けって言ってんだろー」

『…っやだ、』


ぐいっと引き寄せられて無理やりフランの方に向かされる。くそうこんな時だけ何で力強いんだばかフラン。


「あ、顔まっかー」

『うううるさいあんたが変なこと言うから!』


飄々としているフランにむかついて顔をあげると、想像以上に近い距離に息が詰まる。ほんとかわいいなー、と言いながら私の頭をなでてるフラン。

…これ、この視線に私は弱い。優しい、いとおしむような柔らかい瞳。愛されてるって実感させられるような視線。
会った頃は冷たい目だって思ったけど、こんな風に見つめられるともう逃れられない。


『か、かわいいとか言わないでよ』

「えーだってほんとのことだしー、照れてるのもたまらないしー」

『もう黙ってよ…』


フランの言葉に恥ずかしくなって彼の胸に顔を寄せると、ふわっと抱きしめられる。
彼特有の甘いにおい。


魅射られたのは、きっと私の方だ。抱きしめ返すと彼がふ、と笑った気配がした。






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