終末論

同級生


「今日、人類は滅亡しちゃうんだって」

隣に座った、はじめて話すクラスメイトがつまらなそう言った。
がらんとした車内には俺と彼しかいない。


「終末論?」


車内の明かりだけが煌々と輝いている。
薄暗い窓の外は、雪で覆われていた。
ニュースで報じられる終末論。
今朝も見てきた。
誰も信じていない、終末論。
彼は信じているのだろうか。


「もし、今日、世界が終わったら、どうする?」

「どうも、しないかな…。いつもと同じ毎日を過ごして終わるんだろうな」

「どうして?」

「何をしようか考えて、何もできなくなるかもしれないじゃん」

「そっか。俺なら…、いや。俺もお前と同じかも」

そう言って窓の外に目を向けた彼は、曇った窓を指先でなぞる。
がたん、ごとん、となる電車の中、体が揺られる。
まるで、ふたりだけの世界のようだった。


「どうやって終わるんだろうな」

「隕石がぶつかってくるとか?」

「ツイッター見た? なんかさ、どっかの国の天気予報がやばい…みたいなやつ」

「見た見た。すげえよな」

携帯を開いてどこかの天気予報を見せてくれる。
先日に見たものとは違う国で、真っ赤に染まった21日が見えた。
隕石、噴火、いろんな原因で、人類は滅びるらしい。


「ねえ、俺、考えた。世界が滅びるんだったら、最後に一日はいろんな人と関わりたいな」

「お、それいいね」

「じゃあ、お前が第一号だな」

「俺も、お前が第一号だ」

くすくすと笑う彼につられて、笑う。
電車はガタンゴトンと進む。
静かな車内に、俺達の笑い声が響いた。
不意に訪れた沈黙に、俺達はそっと向き合う。
彼の真っ黒の瞳に、俺が映った。
彼の手のひらが、俺の頬に触れて…。

終末論 end
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