子猫はいかが?-2-
「はあ、おなかいっぱい」
「そりゃぁ、よおござんした」
「ねえ、お兄さん」
なんだね? と問いかける前に、きらきらと光る瞳にうっとする。
あきらかに、言いたいことを目で語っている。
「子猫はいかが…?」
「やっぱり…」
溜息をつくと、少年は頭に来たのか、黒いしっぽでばしばしと叩いてきた。
結構痛い。
その、殺傷能力を持ったしっぽは、するすると甘えるように俺の腕に絡んできた。
尻尾の愛撫のような触れ合いに、俺は悪いお兄さんになりそうになる。
「ね? いいでしょ…?」
「いや、別に、飼うのは構わねえんだけど、な」
俺がにやりと笑ったのがわかったのか、少年はびくり、と体を揺らした。
「にゃあああああっいやああああああっ」
「うるさいっ」
「強姦されるううううううっ」
「風呂に入れるだけだろうがっ!!」
風呂場。ぎゃにゃぎゃにゃ騒ぐ少年に頭からシャワーをかぶせる。
悪いお兄さんになる。というのは、性的な意味ではない。
まあ、魅力を感じないことはないが、生憎俺は子どもでは勃たない。
(そもそも性的なことに対して淡白なのだ)
「あっ、こら逃げるなっ」
「あッ、ひあんっ」
「…しっぽも敏感なのか」
「も、はなしてぇっ」
しゅっとしっぽを抜いてやると、少年はびくりと体を震わせた。
可愛い反応するな、とか、思いつつ、少年を自分の膝に乗せる。
はじめは俺は後で入ろう、と服を着ていたが、暴れる少年のせいで結局全裸だ。
まあ、少年を思い、腰にタオルを巻いているが。
「あ、ンっ、お兄さんのえっち…っ」
「エッチだろうが、なんだろうが、風呂にはいってもらうからな。お前、泥臭い」
「しっつれーなぁんっ、しっぽはなしてえっ」
「土ついてるし。…あーあ、部屋掃除しなきゃだな」
と呟きつつ、少年の体を洗いあげる。
それから、自分もさっさと体を洗い、少年を抱えたまま風呂にはいる。
温度はちょうどひと肌より少し暖かい。
「…ん…きもちー」
「だろ? …大人しくしてれば飼ってやってもかまわないぞ」
「偉そうに…、まあ、飼われてやらないこともない」
「ツンデレか? …そう言えば、名前は?」
んーっ、と手足を伸ばして少年は俺の胸に体を預ける。
俺は、少年の髪を撫でつつも、返事を待った。
「名前ねぇー、名前はまだないの。だから、飼ってくれるなら、お兄さんがつけていいよ」
「ん? …じゃあ、ミケとか」
「えー? 猫っぽすぎるよ」
「じゃあ…、コハク」
「コハク?」
「そ。目が琥珀色だからコハクな」
「コハク、ね」
うれしそうにしっぽが腕に絡んでくる。
甘えるようなその姿に、俺は思わず可愛いな、と思った。
「子猫はいかが?」
end
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