君と僕の距離

従弟×従兄


僕と従弟の距離が最初に離れたのは、従兄が5歳の時の引っ越しだった。


「夜にぃ、夜にぃ、僕が大きくなったら、夜にぃことだっこするから、」

可愛らしい声が好き、大好きと告げてくれて、僕は有頂天だった。
毎日、夜、従弟…明が電話をくれて、好きって言って、僕も好きって伝えた。
明と僕の年の差は、5歳。
僕はその時10歳だった。


僕と明の距離が最初に近づいたのは、明が10歳の時の引っ越しだった。


「夜にぃっ、僕が迎えに来ちゃったっ」

最初の引っ越しは明の両親の転勤からだった。
2回目の引っ越しは、両親の離婚からだった。
父親に引き取られた明は、そんなに気にしていなかったのか、僕に笑いかけてきた。
明は僕に大きくなったら、つきあってね、なんておませなことを言ってくれた。
とてもかわいらしくて、僕は明を抱きしめた。
その時の明と僕の年の差は、当たり前だけど、5歳。
僕が15歳の時だった。


僕と明の距離が2回目に開いたのは、僕が16歳の時の留学だった。


「夜にぃ、いっちゃやだよお、よるにい、」

散々、明のそばにいたい、といった僕は、親に半ば強制的に英国に送られた。
毎日電話するね、夜にぃ大好きだよ、といった明の声は、僕よりも力強かった。
それに反して僕は情けない声を出してしまった。
明はそんな僕を励ましてくれた。
やっぱり年の差は5歳。
明が11歳の時のこと。


僕と明の距離が2回目に近づいたのは、僕が20歳の時の帰国だった。


「夜にぃ、お帰り」

帰ってきて、そこにいたのは今まで見てた小さな明じゃなかった。
声も低く甘くなっていて、身長は僕よりも全然高くなっていた。


「夜にぃ、迎えに来たよ」

「…あ、あけなの?」

「そうだよ。明だよ、夜にぃ」

「…し、しんちょう…」

「伸びたでしょ? 毎日牛乳飲んで、早く寝て、夜にぃを抱き上げられるくらいになったんだよ」

「あ、あけ、声変わりした」

「低くなったでしょ? …ねえ、夜にぃ、僕が大きくなったら、てさ。約束したよね?」

「う、うん」

「ねえ、約束、守ってよ」

「…あ、明っ」

僕よりも背の高くなった明。
開いた腕に飛び込めば、とても温かかった。

僕と君の距離=0

end
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