しっぽゆらゆら
人間×猫擬人化?
「おーい、にゃんころー」
家で買っていた猫が、急に家を飛び出した。
ペット可の安いアパート。
俺は、にゃんころという猫とふたり暮らしだった。
ああ、可愛い俺のにゃんころはどこに行ったんだろうか。
家の中を呼んでも、にゃんころのだいすきな空地のドラム缶の中からも、にゃんころは出てこなかった。
俺がぐりぐり撫ですぎたせいだろうか。
それとも可愛い耳にキスしまくったせいだろうか。
どうでもいいけど、明日はハロウィンだ…。
「にゃんころ、どこ行ったんだよ…」
そんな呟きすら、寂しくなった。
にゃんころは、美人な猫だった。
真っ白なふわふわな毛に、青と緑のオッドアイ。
薄ピンク色の可愛い耳の中に鼻先に肉球。
…思い出してたら哀しくなってきた。
カリ…カリカリ、ガリ!!
カリカリとベランダから、可愛い音がして俺はそっちを振りむく。
にゃんころが窓を開けて、と合図する音…。
最後のほうは、にゃんころにそっくりだ。
待ちきれなくて、ガリ!!と盛大に爪を立てるところ…。
にゃんころ…?
カーテンを開き、窓を開けた。
「…は?」
そこにいたのはにゃんころじゃなかった。
小さめな美人。
な、男。
「…ど、どちら様でしょうか」
「にゃん、にゃあ、ご、主人?」
ご、ご主人?…なんだ、この燃えるものは…。
それに、真っ白な毛並みに、青と緑色の瞳…。
「なぁん」
甘えた声も、にゃんころにそっくりだ。
…もしかして、にゃんころ?
いやいやいやいや、にゃんころは猫だったでしょうが。
猫、ん?
なんだ、あのゆらゆら揺れてるものは。
…しっぽだだと!?
わ、だが多かった。
「…にゃんころ」
「なぁん」
「にゃんころなのか?」
「うにゃあ…ごしゅじん、ただいにゃ」
「う、うおお…可愛い。にゃんころなのか、お前」
「うんにゃあ」
にゃんころが人間になった。
部屋の中に招き入れて、窓を閉めればにゃんころは定位置に座った。
それからなぁん、と甘い声を上げて、俺を見る。
か、可愛すぎる。
ふわふわの白い髪の中には、真っ白な可愛らしい耳がぴくぴくしてる。
耳の中を遠目に見れば、薄ピンクだ。
「ごしゅじん、なでて?」
甘えた声に甘えた仕草で俺に寄ってくるにゃんころ。
か、可愛すぎるだろ。
美人なうえに、肌は白くて頬は上気していて、なんだかいやらしい。
ああ、これが俺のにゃんころ…。
「ごしゅじん…?」
「あ、ああ…」
にゃんころは俺の膝の頭を乗せて俺を見上げてきた。
可愛すぎる、だめだこれ。
にゃんころが好きだった、耳の裏とか、顎を撫でる。
白い肌はとても滑らかだ。
「にゃァ…なァ、なァん」
甘えた声とごろごろとなる喉。
鼻血が出てきそうだが、ここは堪えるに限る。
ああ、可愛い…。
「ごしゅじん、もっとしてえ…なァン」
「や、っば」
ジリリリリ…。
「…うそだろ…。夢オチだと…!?」
隣でぐっすりと眠るふわふわのにゃんころを見て、俺は茫然とした。
end
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