キャパオーバーラブ-4-
「おはよ」
教室に入れば、親友の唯に話しかけられた。
あつは後の入口の近くの扉だからすぐに席につく。
唯に連れられて窓際の僕の席につけば、すぐに唯がにやにやしながら僕の頬をついてきた。
「どうしたの、みずるちゃん。あっつんと手なんか繋いで」
「え!? …ち、ちがうもん」
「かわいーみずるちゃん。…ついに俺様幼馴染×女装趣味の僕っこ可愛い子ちゃんktkrか!?おおおと、これは三つ巴か!?ああああそれとも腹黒美形(一人称僕)→俺様幼馴染×無自覚以下略か!?ああああでもみずるちゃんなら兄弟×でもたまんない!!あああああ萌える!!燃え滾る!!ああああああ!!」
「…ゆ、ゆい、変」
「あ、ごめんトリップなうだった。で、どうしたの。不服そうな顔して」
唯のトリップはいつものことだから、スルーする方向で行くとして。
僕の心境を説明するには、僕自体が落ち着かなきゃ。
あつのほうをちらっと見たら、すでに机に突っ伏してた。
早っ。
「あ、あのね、僕変なの!!」
「う、うん?」
「なんか、朝、いつき君と一緒だったのに、なんだか、あつのことばっか考えちゃって」
「うっ、うっはあああああ!! …げふん、失礼。それで?」
「それで、きゅうってなる」
「…っッッ!!!(む、無自覚うううううううう!!)」
「ね、ゆい、どういうことなの?いつき君に触られた時より、あつに手を掴まれたときのほうが、ドキドキしたのっ、僕、おかしいよね!?」
僕が必至に話してるのに、ゆいってば鼻を押さえて涙流してる。
な、なにごと?
唯がこうなったら、落ち着くまで待つしかないよね。
幸い、唯とは席が隣だから。
「…げふっ。みずるちゃん、ごめん」
「うん」
落ち着いたみたい。
先生が来たから話が中断しちゃった。
でも一時間目が自習になった、嬉しい。
HRもすぐ終わってくれるから。
「ずっと思ってたんだけどさ。みずるちゃんがいつき君を好きっていうのは、恋愛感情としてだったの?」
「え? …違うの?」
「これはみずるちゃんの気持ちの問題だから、俺がどうこういえたもんじゃないんだけどさ」
「…ゆ、ゆいぃ…」
唯が言ってることがよくわからないよー!!
僕は、ずっといつき君のことが好きだったし…。
違うの?僕がいつき君を好きだったのは、恋愛としてじゃないの?
「みずるちゃんがいつき君の話をするときって、だいたい、すごいよねとか、かっこいいよね。ってだけだったから、てっきり、憧れだけかと思ってた」
「…あこがれ」
「そ。だってさ、あっつんといるときの方が、みずるちゃんずっと可愛かった」
「…あッ」
よく考えてみれば、僕、いつき君のこと好きでも、付き合うとか、きすするとか、考えたことない。
っていうことは、ずっと、間違ってたの?
「ぼ、僕、いつき君のこと好きじゃなかったの?」
「うーん。どうだろ。憧れと好きは違うからね」
「ど、どうして、あつにドキドキするの?」
「ん? それは、自分で気づかなきゃいけないよ」
唯がそう言って笑って自習課題をやり始める。
僕も同じように自習課題を開いてみた。
うう、僕の嫌いな数学だ。
あつはどうだろ。終わったかな、数学得意だもんね。
ああああ!!気づいたら、あつのこと考えちゃうよ!!
「ゆいぃー…わかんなぁい!!」
キャパオーバー再び!
涙がぼろぼろだよ。
数学もわからないし、あつのことばっか考えちゃうし、それがなんなのか分からないし。
「おおふっ!! 落ち着いて!!」
「ん、ん、おちっ、ついてる!」
「見るからに落ち着いてないーっ。あーもう、あっつん来てー」
「あー?」
唯があつを呼ぶからすっごいびっくりした。
体がものすごい熱い。
あつが眠たそうに歩いてくる。
心臓が今までにないくらいドキドキしてる。
「み、瑞! どうした!? 何された?」
「なにもしてないよ!! みずるちゃんはキャパオーバーなうだよ!!」
唯がぶんぶんと手を振るのを見て、思わず笑っちゃった。
あつが面白いくらいに僕を心配するから、嬉しくなる。
もしかして、僕、あつのこと…。
「すき」
なの?
ああ、キャパオーバーする。
キャパオーバーラブ!!
end
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