小豆君とお友達
5月のリクエスト祭り 『小山小豆君の王子様。』より
「あまさ様! みてくださいっ、あそこ、ひこうき!」
うんと手を伸ばし空を指さす小豆に、甘佐は思わず頬を緩めた。
ゴールデンウィーク最終日。
ふたりは大きな森の中の公園に来ていた。
新鮮な空気と、抜けるような青空のもと、菜の花に囲まれ寝転がっている。
「ちぃ、ちゃんと日焼け止め塗ったか?」
「うん! 塗りましたっ」
「すぐ赤くなるからな」
身体を横に向け、小豆の頬にかかる髪を梳く。
白い肌が太陽の光を浴び、透き通るように見えた。
小豆の頬を撫で、唇を指先で擽り、頬に口づける。
「ん、くすぐったい」
「そうか」
「ふふ、あまさ様」
小豆も身体を動かし、甘佐の胸元にすり寄る。
ぎゅっと抱き付いて、甘えるように甘さを呼べば背中を撫でてもらえた。
その心地よい手つきに小豆は小さく笑う。
「あまさ様、あずき、サンドイッチ作ってきたんです」
「サンドイッチ?」
「はいっ。食べて…、くれますか?」
「当たり前だ。じゃあ、起きるか」
小豆を抱えたまま起き上がった甘さを小豆の額に口づける。
今日は大き目のカゴバックを持っているな、と思っていたが、その中から出てきたサンドイッチに甘佐はお腹がすくのを感じた。
「あっ」
サンドイッチを食べ始めると、不意に小豆が声をあげる。
その視線の先には見知った姿があり、甘佐は驚いた。
ここは穴場で、めったに人が来ないが今日は珍しく人が来た。
“ねえ、あそこ、ちいちゃんと甘佐さんだ”
「え? あ、本当だ」
「ここに人いるの初めて…」
汰絽と有岬が手を振るのを見て、椿も同じように手を振る。
それから、ふたりの元へ来た3人はしゃがみこんで、小豆の頭をかわるがわる撫でた。
「かわいいねぇ」
汰絽が和むねえ、と笑いながら、小豆の頭を撫でるのを見て、甘佐は軽く笑う。
可愛いのがそろいもそろったな、と小豆の背中を撫でた。
「僕たちは菜の花を摘みに来ただけなんだけど、甘佐君たちはピクニック?」
「ああ。菜の花を摘んでどうするんだ?」
「お家に飾るの。ね、たぁ君」
「うん。うさちゃんのお友達に図書館で働いている人がいるから、図書館にも飾ってもらおうと思って」
「へえ。季節を感じられていいもんだな」
甘佐がそういうのを聞いて、椿がこくりと頷く。
有岬は小豆と一緒に菜の花を摘んでいた。
こうやって摘むんだよ、と有岬が小豆に教えている。
温かい風が頬を撫でた。
小豆は何本か菜の花を摘んで、甘佐の元へ戻る。
「あまさ様のお部屋に飾ってもいい?」
「ああ」
菜の花の茎を水を吸わせたポケットティッシュで包む。
それからカゴバックに居れて、小豆は甘佐の隣に腰を下ろした。
「うさちゃん、ありがとう」
“いいえ。嬉しそうでよかった。って伝えて、つーちゃん”
「嬉しそうでよかったって」
小豆が照れるように笑う。
汰絽と椿は菜の花を十分に摘んだのか、そろそろ帰るね、と立ち上がった。
遅れて立った有岬は、小豆の頭を撫でる。
「じゃあ、またね。ちいちゃん、甘佐君」
3人に手を振り、ふたりは笑いあう。
きゅっと手をつなぎ、もう一度寝転がる。
心地よい風がふたりの前髪を揺らした。
小豆君とお友達 end
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