可愛い可愛い迷子ちゃん-2-
『…ちぃ、手ぇ離すなっていっただろ!』
「…あ、ちぃちゃんを保護したものですが」
電話で出た男は開口一番の低い怒鳴り声。
驚きつつも、汰絽は冷静に返した。
相手も状況に気付いたのか、大人しくなる。
「…今、フードコートにいますので、迎えに来てくださりますか?」
『ああ、急に怒鳴りつけてすまない』
「平気ですよ。珍しい髪色が2人と黒髪1人が小豆君を見てますので、すぐにわかると思います」
『ありがとう』
電話の最中に戻ってきた椿と有岬は小豆を餌付けし始めていた。
そんな2人に笑いながら、汰絽は電話を切る。
不安そうに椿の手からたい焼きを食べる小豆は、携帯を受け取ると鞄にしまった。
「あまささん、すぐ来るって」
「…怒られる、他の人とお話しちゃだめなの。小豆、あまさ様に嫌われたら死んじゃう」
「大丈夫だよ。嫌いになんてならないよ、きっと」
“そうだよ。大丈夫って伝えて汰絽君”
「そうだよ、大丈夫だって」
こくりと頷いた小豆にほっとする。
今度はタコ焼きを有岬の手から貰っていた。
「ちぃ…!」
駆けつけてきた長身イケメンに、小豆は椅子から立ち上がって、駆け寄っていった。
ぴょんと跳ねて、抱きつく。
小豆を受け止めたイケメンはぎゅう、と強く小豆を抱きしめた。
「お前はもう、手ぇ離すなって言ったそばから離すからな…」
愛おしそうに、ちゅっちゅっと髪に口付ける。
額に下がっていき、嬉しそうな小豆はぎゅっとイケメンにしがみついた。
「甘佐様、ごめんなさい。小豆、あずき、約束破っちゃった…っ」
ぽろぽろと涙を流しそうな小豆の頬を挟む。
目元をぬぐい、甘佐は笑った。
「いいよ。…見るからネコだし。…小豆を拾ってくれてありがとう」
「いいえ。泣いていたので、放っておけませんでした」
「今度は手を離さないでね、小豆ちゃん」
椿に頭を撫でられて、小豆は恥ずかしそうに頷く。
甘佐はそんな小豆に微笑んだ。
「そうだ、甘佐さん、かな?」
「ああ」
「たい焼きとタコ焼き、たくさん買ってきたから、食べない?」
「それは…、悪い」
「食べてくれないと困るんだけどな」
有岬も椿もこくこくと頷くのを見て、甘佐は苦笑した。
空いていた椅子を動かして、甘佐は小豆とともに座る。
3人は満足したのか、嬉しそうに笑った。
“僕の母校って言えば母校…なんだけど、最近はどうなのかな”
「甘佐さん達の学校が、この子、有岬君の母校なんだけど、最近はどう? だって」
「有岬さん、か。…最近は、まあ良い方だと思う。親衛隊はちぃが統率しているから」
“甘佐君が生徒会長なんだね”
「会長なんだねって。うさちゃん、ほっぺついてるよ」
有岬のほっぺたから椿がたい焼きのあんこを取る。
それを口元に持っていき、ぺろりと舐めた。
その様子を甘佐がじっと見ている。
どうしたの、と有岬が首をかしげた。
「…あんたたちの彼氏はそんなことして怒らないのか?」
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