子供みたいな大人たち-5-*
スープのいい香りと、ハンバーグのソースの香りが漂って井上は時計を見た。
ちょうど夕食時で、隣の風太を見ると、誇らしそうな顔をしている。
汰絽の腕は確かなようで、においから味も保証できそうだ、と感心した。
テーブルに料理が運ばれて、井上達は椅子を人数分揃える。
並べられた料理を見ると、とても美味しそうだ。
「すごい、見た目も完ぺきだね」
“僕が作ったとは思えないでしょ”
有岬が嬉しそうに笑いながら唇を動かす。
笑いつつも、有岬の頭をなでて、井上は箸を持った。
いただきます、とあいさつを済ませ、食事を始める。
「さすが、汰絽君。椿の料理もおいしいけど、たまにはいいね」
「ありがとうございます」
時雨に褒められ、笑いながら汰絽は隣のむくの頬を拭いた。
むくの隣に座っている風太は、ハンバーグを小さく切っている。
その様子に、井上や有岬は微笑む。
まるで、親子のようだ。
食事が終わり、リビングでぐだぐだし始める。
愛らしい4人はテレビに夢中で、残り3人はソファーに腰掛け、そんな4人を眺めていた。
片手にはビールが入ったグラス。
きんきんに冷えていて、喉を潤した。
そんな中、むくが眠たいのか、大きなあくびをひとつ。
「あ、もうこんな時間。…風太さん、明日早いでしょう? むくも眠そうですし、そろそろ」
汰絽が風太を振り返り、そう告げる。
ああ、と頷いた風太は、グラスを煽り、テーブルに置いた。
「グラスは僕が片付けるから、またね」
椿が風太と汰絽に手を振る。
むくはすでに夢の中で、風太に抱えられた。
時雨や井上は3人に手を振り、有岬も椿と同じようにまたね、と手を振る。
玄関へ見送りに行った椿と有岬は、静かに閉められた扉に微笑む。
“また今度遊びたいね”
「うん。次はお菓子作りでもしようね」
有岬が頷いたのを見て、リビングに戻ろうね、と2人はリビングに戻った。
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