子供みたいな大人たち-3-*

“たろ君”

くい、と袖をつかまれ、汰絽は有岬のほうへ視線を向けた。
有岬がもじもじとしているのを見て、微笑む。


「なあに?」

“あのね、僕、お料理下手で…教えてほしいんだけれど…”

有岬のお願いに、汰絽は少し嬉しそうな顔をする。
そんな汰絽の表情に安心したのか、有岬はほっと息をついた。


「料理? 構わないけれど。いつがいいのかな?」

「汰絽君、すごく急なんだけど、材料あるから今かな」

「今? なんの材料ですか?」

「ハンバーグとオニオンスープの材料。後は冷蔵庫にあるものを使って構わないよ」

「わかりました」

汰絽のあっけない承諾に、風太は誇らしそうな表情をし、井上は驚いたような顔をした。
すごいね、と呟くと、風太がでしょう、と笑う。


「時間帯もちょうどですし、はじめていいですか?」

「良いよ」

「じゃあ、うさ君、やろっか」

“うん”

「僕もいい?」

「つー君ももちろん」

時雨が近くにあった棚から人数分のエプロンを出す。
受け取った3人はエプロンをつけ、キッチンへ移動した。


「なんで3枚もエプロンがあるんだよ」

「あれ、うちの試作品」

「お前んとこデザイン会社だったか?」

「ああ。あ、むく君はあっちに行かなくていいのかい?」

「んー? むく、みっちゃんとお話したいな」

うさちゃんうさちゃんと有岬にべったりだったむくは、今度は井上の膝の上に腰を下ろした。
楽しそうに笑うむくに、風太も笑い返し、時雨はちょっぴりつまらなそうな顔をする。
そんな時雨に井上がにやりと笑った。
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