子供みたいな大人たち-2-*

「お邪魔します」

3人分の声が聞こえて、椿が満面の笑みを浮かべた。
有岬と井上も玄関の方へ視線を向けて、出迎えに行った時雨を待つ。
リビングに入ってきたのは、時雨に続いて、風太、汰絽、小さな男の子だった。


「あれ? 可愛らしい子がいるな。風太君、その子は?」

カーペットに下りて、有岬の隣に座っていた井上が問いかける。
有岬も気になるようで、そちらの小さな子の様子をうかがっていた。


「むく、あいさつしてね」

汰絽に促された小さな子は、風太の足の後ろに隠れていたがひょっこりとすぐに顔を見せた。


「春野むくです。8歳です」

「むく君ね。…汰絽君の甥っ子だったかな?」

「うんっ。おじさんは…?」

“道幸さん、おじさんだって”

くすりとおかしそうに笑う有岬に、井上は苦笑した。
こらっとむくを軽く笑いながら、怒る汰絽に、風太も苦笑する。


「おじさんは、時雨と同級生の井上道幸だ。こっちが桃千有岬」

「みっちゃんにうさちゃん?」

「みっちゃんは初めて呼ばれたな。むく君」

「ほんと? しーさんと仲良しなの?」

「仲良しだよ。風太君とも、友達になったばかりさ」

「みっちゃんはお友達いっぱいいるんだね」

井上とすぐに打ち解けたむくは、すぐにカーペットに座る。
椿とあいさつを済ませた汰絽と風太も同じように腰を下ろす。
風太とむくと話し始めた井上に、有岬は立ち上がり汰絽の隣に移動した。


「うさ君。僕手話を覚えたんだよ」

“あ、ほんとだ。上手だね”

「風太さんと一緒に。今度はボードに書かなくても大丈夫だよ。時雨さんとつっ君も練習したからね」

“…ありがとう。うれしいよ”

「うさ君ともっと話したいからね」

汰絽の微笑みに有岬がなごんでいると、椿がキッチンからクッキーの入った皿と飲み物を運んできた。
礼を告げると、むくが汰絽のもとへやってくる。


「どうしたの?」

「うさちゃんともお話したいっ」

“どうしよ、ボード持ってきてない”

「大丈夫だよ。むくも僕達が練習してるの見て、覚えたから」

“ほんと? すごいね、むく君”

ゆっくりと指を動かすと、むくがううん、と笑った。
それから汰絽と有岬の間に座り、にこにこと笑う。
椿も有岬の隣に腰をおろし、飲み物をコップに注いだ。


「なんていうか、まるでお花畑にいるようだな」

井上の呟きに、前にどこかで…なんて誰かが呟いた。
何をするでもなく集まった7人は、おやつタイムを楽しむ。
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