溢れだす
67876hit やまさん様
月夜椿
時雨×椿
夏の暑さも過ぎ去って、涼しくなってきた日。
時雨はウトウトしている椿と2人、飛行機の中だった。
以前、旅行に行ったときに約束した沖縄旅行。
まとまった休みを取り、ようやく実現することができた。
「椿、眠って構わないよ」
そっと髪を分け、額に口付けすると、椿がすっと眠りについて行くのが見えた。
時雨はそんな椿に微笑んでから、窓の外を見る。
雲の上を飛行機が飛んでいて、まるで白い雲がアイスクリームのようだった。
「まもなく、着陸体勢に入ります。シートベルトを…」
機内アナウンスが入り、時雨は寝入っている椿を起す。
椿は眠たい目をこすりながら、シートベルトをつけた。
「ついたね」
飛行機が空港に到着し、時雨達は空港内に入る。
ようこそ、の、歓迎の文字を見て、椿は嬉しそうに笑った。
「最初どこ行こうか」
「お城みたいな」
「ああ、いいよ。その前に車借りに行こうね」
時雨の大きな手が椿の頭を撫でる。
それから椿の手を取り、空港を出発した。
車を借り、ナビをセットし、出発する。
助手席に座った椿はさっき買ったジュースを飲んでいる。
名物品の柑橘類のジュースで、おいしいのかにこにこと微笑んでいた。
「おいしい?」
「うん、とっても。時雨さんも飲む?」
「うん。1口頂戴」
「はい、どうぞ」
椿から手渡されたペットボトルをあおる。
爽やかな味が口の中に広がった。
「おいしいね。ありがとう」
「どういたしまして」
「あ、もう直着くね」
「ほんとだっ、見えた」
椿が窓に張り付く。
嬉々とした様子を見て、時雨も見えたね、と笑った。
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