ドキドキと高鳴って

胸が高鳴るのが止まらない。
止まらない鼓動に、汰絽は目を瞑った。
苦しくて、体が熱い。
ぎゅっと胸元を握り締めて、汰絽はしゃがみこんだ。


「止まって…っ」

きゅっと唇を噛みしめて、ぎゅっと目を瞑る。
ドクドクと心臓の音が聞こえた。


「汰絽」

好野の声が聞こえ、汰絽は顔を上げた。
困ったような表情をした好野は、汰絽の真っ赤な顔を見て、苦笑する。
それから、ポンポン、と頭をなでて、汰絽を立ち上がらせた。


「お前、意識しすぎだよ」

「…風太さんがそばにいるって、思ったらドキドキするのが止まらなくて、」

「うん」

「今まで分んなかったけど、すっごく、すっごくかっこよく見えるようになって」

きゅっと唇を紡ぐ。
そんな汰絽に好野は促すように頷いた。


「そしたら、もう、駄目。熱くなって、ドキドキが聞こえちゃうと思ったの」

俯いた汰絽は、小さな手を握り締めた。
ようやく落ち着いてきたのか、体の熱が冷めてくる。
好野は一息ついた汰絽を見て、微笑んだ。


「初恋だもんな、どうすればいいかわからないんだろ?」

「…うん、どうしよ、そばに居れないよ…、こんなんじゃ、ばれちゃう」

「大丈夫。深呼吸しろよ」

「ん。…すー、はー、」

落ち着いてきたのか、汰絽はふんわりと笑った。
好野もそんな汰絽にほっと息をついて、戻ろう、と声をかける。

空き教室に戻ると、風太と杏は大丈夫か、と声をかけてきた。
頷いて、隣に座った汰絽は今度は落ち着いて昼食にありつける。


「変な奴だな」

そう隣で風太が笑った。
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