気付き始める

昼休みの空き教室。
風太と杏は窓際の席で、座っていた。
くっつけられたよっつの机に2人は向かい合って座っている。
汰絽と好野を待っている2人は、静かに携帯を見ていた。


「はるのん、最近汰絽ちゃんとどうなの?」

「…そこそこ」

「そこそこ? 進展があったみたいだねぇ」

「まあ、確信にまでは至ってない」

携帯を見ながら、言う風太に、杏は笑った。
ようやく進展したようだ。
嬉しくなって、鼻歌でも口ずさみそうな気分になる。


「あ、そういえば。汰絽ちゃんって携帯持ってるの?」

「いや? どうした」

「いつも家電使ってるのかなって。…買ってあげれば?」

「…まぁ、いつもお前通して、一外を通すのも面倒だしな」

自分の携帯を見て、風太は外を見る。
そんな風にしているうちに、教室の扉が開いた。


「こんにちはー」

「お、来たねー。こんにちは、よしたろ」

「おっ、面白い略し方ですね」

好野がからからと笑いながら杏の隣に座る。
さっと座ってしまった好野につられて、汰絽は風太の隣に腰をかけた。
緊張で心臓がとくとくと音を立てている。
聞こえてしまうのではないか。
そんな不安が胸をよぎって、隣に座る風太をチラリと見た。


「どうした?」

「い、いえっ。なんでも、ないです」

ばっと視線をそらして、お弁当箱を鞄から取り出す。
ひとつを風太の前にさっと滑らせて、自分のものを開いた。


「お前、どうしたの? 変だぞ」

すっと大きな手のひらを額に寄せられて、汰絽はびくりと体を震わせた。
熱はないな、と呟いている風太を凝視する。
かあ、と一気に頬が熱くなって、汰絽は椅子から大きな音を立てて立ち上がった。


「ト、トトイレ行ってきますっ!」

ばっと駆け出して行った汰絽をぽかん、と見る風太と杏。
好野はそんな汰絽を追いかけるため、俺もっ、と空き教室を出て行った。
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