恋…かな?
「…俺に聞くかぁ…? まだ立派なチェリーボーイなんだぞ」
「それを恥じなく言うよし君が好きだよ」
「おう。…で、お前、それ本気なのか?」
「…うん。ドキドキして、どうしようもなくなる」
風太のことを思うと、胸がぎゅうって締め付けられる。
その旨を好野に伝えると、好野はがっくりと頭を抱えた。
「俺は偏見はないんだ。ないんだけどな、相手が相手だ」
「…どうして?」
「風太先輩は、まず総長だろう? 親衛隊できるくらいの先輩だろ」
「うん」
好野はいつになく真剣で、汰絽はどんなことを言われるのか、胸が苦しくなった。
恋なんだろう、この気持ちは。
でも、自分で決めるのは怖かった。
初めてなんだ。
そんな風に思って、汰絽は頬がほてるのを感じた。
「…何より、お前の義兄さんだろ」
「あ…、」
「もし、風太先輩もお前が好きで、付き合ったとするだろう?」
「…うん」
「それで、もし風太先輩のご両親にばれたりしたら? むくちゃんの教育を考えると?」
「…あ、あ…」
「お前のその気持ちはたぶん恋だろうな、きっと。けれど、その恋は簡単に応援できないんだよ」
好野の言葉はどれも正論で、汰絽は鼻がツンとするのを感じた。
もし、風太さんも僕のことが好きだったら。
そう考えると、先は見えない。
風斗さんや、むくのことを考えた途端に、芽吹き始めた恋は、悲しいものになる。
好野は涙をこぼし始めた汰絽の頭をなでた。
「できる限り、応援する。だから、簡単じゃなくてもあきらめるな」
好野のふざけた声に、汰絽は笑みを浮かべた。
「うん、うん。よし君、ありがと、よし君大好きだよぉー」
「俺もだよぉー」
ぎゅっと手を握ると、元気が出た気がした。
いちゃいちゃしているうちに、好野の携帯が音を立てる。
「あ…、杏先輩から。空き教室で昼食べようだって」
「…どうしよ、行きたくない」
「そんなこと言ったら、家に帰れなくなるだろ」
「でも、認めたら、急に」
「うわ…お前、可愛い顔して、真っ赤になるとか反則だろー、かわえー!」
わしゃわしゃわしゃと頭を撫でられ、汰絽は笑う。
緊張が溶けて、汰絽はうん、行くよ、と答えた。
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