どうしましたか

気付き始めた気持ちに、汰絽はどうしようもない状況にとらわれていた。
初めての気持ちで、好野しか相談する友達がいない。
4限目の休み時間、汰絽は好野に声をかけた。


「どうしよよし君」

「早口すぎて、どうしよし君って聞こえた。何これワロス」

「…もう二度とむくとゆうちゃんに会わせないからね」

「ごめん何どうした」

ちらちらと降り始めた雪。
カーディガンの袖をいじりながら、もじもじしている汰絽に好野は問いかけた。
好野の顔は真剣そのもの。
汰絽の脅しが有効に効いた証拠だった。


「あのね。友達の話なんだけどね」

「うん」

「先輩といるとドキドキするんだって、でね」

「うん」

「その先輩が男の人でね」

「うん」

聞いてるのか、と好野の顔を見ると、好野の顔は真っ青に染まっていた。
風邪かな、と額に手を当ててみるものの、ひんやりとしている。
大丈夫か、と考えた汰絽は、手を離した。


「えっと、総長さんで、あとは…」

「…」

「ああ、もう、ドキドキするのって、恋なのかな」

「…。あのさ」

「うん」

窓の外に視線を移す。
現実から逃げるように好野は体を震わせた。
寒さからではない。


「…お前、俺以外に友達いたか」

「…」

「…だよな。…お前のことだろ、それ」

無言は肯定の印、そう呟きながら好野は汰絽に視線を戻した。
頬を染めた友人は机の下を見ている。


「急にどうしたんだよ」

真剣にそう尋ねると、汰絽はぱっと顔を上げた。
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