1人はいや

目を覚ますと、頬にひんやりとしたものが当たった。
そのひんやりとしたものは、逆の頬に移る。
そっと目を開き、見ると、風太がそこにいた。


「風太さん」

「ああ、今度はしっかり起きたか」

「? あの、むくは」

「結子さんとこに預けた。…知恵熱だろうけど、一応な」

「そうですか」

汰絽がゆっくりと体を起こすのをさせる。
それから汰絽の額に触れて、熱を確認する。


「まあ、多少は下がったか。まだだるいだろ」

「少し」

「明日は土曜だし、ゆっくりしてな」

こくりと頷いた汰絽に、風太はほっと息をついた。
それから汰絽の膝に鍋が載せられたお盆を置く。


「お粥、食べてから薬飲め」

「あ、ありがとうございます」

「少し声かれてんな。やっぱ風邪か」

蓮華で掬って口に運ぶ。
薄く塩味が効いていて、とても美味しい。


「おいしいです」

「そうか」

目元を赤く染めた汰絽を、風太は眺める。
ベッドに腰をかけ、テレビを付けた。



「たろはここで寝な」

「風太さんは…?」

「俺はそこのソファーで寝るよ」

「駄目、」

汰絽がきゅっと風太の服を掴んだ。
そんな汰絽に風太はそっと髪を梳く。
指が通る感覚が心地よくて、汰絽は目を細めた。


「駄目?」

「だめ、一緒に…」

「一緒に…?」

「寝て…、1人はいや…」

うとうとしてきたのか、汰絽はゆっくりと目を瞑った。
風太は眠ってしまった汰絽に、こっそり溜息をつく。
それから苦笑しながら、ベッドに入りこんだ。
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