キス?
「おはよー、たぁちゃん」
隣で嬉しそうにあいさつしてきたむくに答え、汰絽は小さく笑った。
この間の元気のなさはもうすっかり無くなっていて安心する。
むくがいそいそと着替えるのを見て、汰絽は風太の部屋へ向かった。
こんこん、と風太の部屋の戸をノックする。
返事がなくて、汰絽は入りますよー、と小さく声をかけて部屋に入った。
うつ伏せで眠る風太が目に入る。
ベッドに腰をおろし、風太の白い髪に触れてみた。
心地よい感触に面白くなって、わしゃわしゃしてると、風太が上着を着ていないことに気がつく。
しなやかな筋肉が目につき、思わず息を飲んだ。
「うわぁ…」
そっと布団を捲り、汰絽は背中に頬ずりした。
うへへ…と不気味な笑い声が漏れる。
「…んー…?」
「きもちいーっ」
「…たろ?」
目を覚ました風太が体の向きを変えた。
ちょうど腹筋に頭を置くような形になる。
ぽんぽんと、頭を撫でられて、少し恥ずかしいような気がした。
「あー…どうした」
「朝です。支度してください」
「あぁ。…たろ」
不意に名前を呼ばれて、汰絽は起き上がる。
それからこてんと首をかしげると、風太に引っ張られる。
あ、と声を上げる間もなく、唇に何か触れた。
「んっ…」
それはすぐに離れて、風太が離れていく。
ばた、とベッドに倒れるのを見て汰絽は口元を押さえた。
「え、…えっ?」
再度唇に手を当てる。
ほのかに、ぬくもりを感じて、汰絽は立ち上がった。
「ふ、ふうたさんの、ちかんっ!!」
ぼすっと布団が音を立て、次に扉が大きな音を立てた。
リビングに戻ると、踏み台を使って箸を出したむくがぽかんと口を開けていた。
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