貧血と寂しがりと口付け

抱き上げた汰絽をベッドに下ろすと、風太はむくを1階に連れていくように美南に告げた。
むくを抱き上げた美南はすぐに1階に下りる。
たあちゃんどうしたの、とむくに問いかけられて、美南は少し具合悪いみたいだから、下で静かに待っていようね、とむくを宥める。
物分かりのいいむくは、不安そうに、わかったと言った。
ゆっくりでいいから着替えな、と汰絽に着替えを渡し、着替えさせる。
汰絽が終わった、というのを聞いて、風太は汰絽の髪を乾かした。



「たろ」

「ん…、少し休めば、治ります…」

「…良かった」

「…うん、ふうたさ…」

「ん?」

と、問いかけると、汰絽は布団からそっと手を出した。
その手が細く、急に不安に駆られる。
すぐにその手を握り、風太は汰絽に笑いかけた。


「大丈夫。ここにいるからさ」

「…うん、ここにいて…」

「一緒に寝てやろうか?」

「ん…、ぎゅって、」

もうちょっとそっち寄って、と言うと、汰絽はこくりと頷いて、端による。
端に寄った汰絽に、風太もベッドにはいりこみ、汰絽を抱きしめた。
抱きしめられた汰絽は安心したような表情をして風太にすり寄る。


「たろ、何か不安なことでもあったのか…?」

「ない…」

「本当か?」

「ん…、少し、気を張っていたのかも…」

「気を?」

「ん…」

うとうととしてきたのか、汰絽の返事が静かになっていく。
そっと、それでいて強く抱きしめる。
抱きしめられた汰絽は安心したのか、小さな寝息を立て始めた。
ふわふわの蜂蜜色の髪を撫でる。


「たろ…、ごめんな」

そっと囁き、額、頬に口付ける。
少しだけ罪悪感を感じながらも、風太はそっと口付けを数回汰絽に送った。
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