お帰り

「ただいまーったぁちゃんっ」

可愛らしい声が、部屋に響き、汰絽は玄関へ走った。
小さな体を抱き上げ、玄関に立っている風太を見上げる。
結子と会話している風太は、汰絽を見て微笑んだ。


「おかえりっ。…結子さん、三日間もありがとうございました」

「いいえ。楽しかったわ」

「あ、これ、お礼です」

結子に手渡されたのは、汰絽が作ったクッキー。
可愛らしい包装紙に包まれている。


「あら、手作り? …おいしそうね、ありがとう。結之も喜ぶわ」

「いえ、そんな大したものじゃないんで…」

「ふふ、ありがとう。じゃあ、また今度、お茶会でもしましょ」

「はいっ、」

風太から汰絽の腕に移ったむくは、結子と手をつないだ結之に手を振った。
部屋の扉が閉められて、汰絽はむくをおろす。
素直に降りたむくは、汰絽の手を握った。


「楽しかった?」

「うん。ゆうちゃんのお家、すっごい大きかったよー」

「そうなんだ」

「おっきいわんこさんがいた」

「わんこさん?」

「しぇ、しぇぱー?っていうわんこさん」

「シェパード?」

「うん! それっ」

首をかしげながら、汰絽に必死に伝えるむくに、汰絽は笑顔を見せた。
それからむくの柔らかな髪を撫でながら鞄を受け取る。
風太と三人でリビングへ向かった。



先日の集まりの後、夜を明かし午前中に後片付けを終え、午後までに家についた。
夕方になる前にむくが帰ってきて、今は夕食を汰絽が作っている。
リビングでは、風太がむくに絵本を読んでいた。


「ふうたー、おりがみしたい」

「おりがみ?」

「ん。ゆうちゃんからもらったー」

「おお、するか」

むくが小さな鞄から取り出した折り紙。
色とりどりの折り紙の中から、むくは青色、風太は黄色を手に取った。
折り紙の本もあり、それを開く。
黒を基調としたリビングの棚には、むくの絵本などが増えていた。
それを風太はほほ笑ましく思う。


「ぱんだつくる!」

気合を入れたむくが、一生懸命パンダを折り始める。
青色のパンダは、案外綺麗に作られた。


「お、むく上手いな」

「そう? たぁちゃんの方が上手なんだよー」

「へえ」

「ふうたも何かおって」

「何がいい?」

「んー、あ! これがいい!!」

「お、兎か」

「んー!!」

風太はむくの指さした兎を見た。
簡単で、かわいらしい。
折り始めると、むくが嬉しそうに眺めてきた。


「かわいいー」

出来上がった兎を手に取り、満面の笑みを浮かべるむく。
久しぶりのその笑顔に、リビングに来た汰絽も笑みを浮かべた。


「ごはんですよ」

「お、飯か」

「たぁちゃんのご飯ー」

「ふふ、むく、先に手洗おう?」

元気良く返事をしたむくを連れて、風太は手を洗いに行った。
返ってくると、しっかりと準備された夕食が目に入る。



「むく、昨日はなにしたの?」

「んー、昨日はね、ゆうちゃんとプール入ったっ。お庭におっきいのがあった」

「庭にプールとかすごいな」

風太がそういうことに、御曹司なのに感覚は一般人だなあ、とか汰絽は思わず笑った。
それから、むくの頬についた米粒を取る。



早めに終わった夕食。
三人はリビングでくつろいでいた。
風太は部屋に置いてあったむくへのお土産を持ってくる。


「むく、ほい」

風太から手渡された紙袋の中を見て、むくはまた満面の笑みを浮かべた。
取り出されたのは、春野家にそっくりな大きめなにゃんこ達。
むくの隣に座る汰絽も、むくの笑みに、嬉しそうだ。


「わ、かわいいー!! むくたちにそっくり」

「でしょ? …むく、嬉しい?」

「うん、ふうた、たぁちゃん、ありがとう!!」

むくに抱きしめられたにゃんこ達は、きゅっと少し苦しそうだった。

一緒に暮らそう end
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