れっつぱーりー

「うおお、すごいクオリティだな…」

「それほどでも」

夏翔の声に、汰絽は照れるように笑った。
それを眺めていた風太が汰絽を呼ぶ。
呼ばれた汰絽はすぐに風太の傍へ寄った。
自分を睨んでいる風太に、夏翔はにやにやと笑う。


「ふうたー、お前、心せまいな」

なんて夏翔の軽口に中指を立てながら、汰絽を隣に座らせた。
それから、ふわふわの頭を撫でながら、一言告げる。


「そろそろみんな来るだろうから、側にいろ」

「はい」

「たろ、甘い匂いするな」

ふいに香ってきた香りに、鼻を頭に寄せ匂いを嗅ぐと、とても甘い匂いがした。
汰絽はそうですか?と自分の髪を摘まんでみる。
その仕草が可愛くて、風太は汰絽の髪を梳いた。


「楽しめよ?」

「はいっ、美味しいのたくさん食べれますし、たくさんきん…」

「…筋肉は禁止。俺だけにしな」

「うー。一日一回…」

「それは俺が恥ずかしいからダメです」

「ケチー」

風太が汰絽の頭をぐりぐりし始めたところで、チームのメンバーが何人も集まってきた。
ソファーには風太と汰絽が並んで座る。
杏と美南もすぐに来て、風太と汰絽を挟むように座った。


「そろそろだな」

そんな声と同時に、真ん中の大きなテーブルに料理を乗せられた。
ケーキが一番真ん中に置かれて、その周りの料理はどれも華やかなもの。
遠目で眺めて、汰絽の目が輝いた。


「す、すごいおいしそうです…!!」

「わー。たろちゃんの目きらっきらだー」

「うお、すげ」

「風太さん、おいしそうですねえ」

「そうだな」

嬉しそうな顔の汰絽に杏も風太も同じように笑う。
風太は特に優しげな顔で笑った。
そうこうしているうちに、どうやらメンバー全員が集まったようで、風太があー、と声を上げる。
さっと汰絽の耳をふさぎながら。


「はい、話聞けー。…今月の誕生日の奴からさっさと料理とれ!! …今日は目一杯食えよ!!」

「いえー!!」

すさまじい声で全員が喜び、今月誕生日の人達が料理に群がっていった。
その様子に汰絽はぽかん、とする。
風太はどすっとだらしなく汰絽の隣に座った。


「料理、後で取りに行くぞ」

「はい。すごい迫力ですね」

「食い盛りが集まってるからな」

「ふふ、夏翔さんも作りがいがありますね」

「だな。たろ、騒がしくなるけど、勘弁してくれ」

「大丈夫です」

「そっか」

ふにゃん、と笑った汰絽に風太も笑い返し、それからある程度座ったメンバー達を見渡した。
それから汰絽を連れて、テーブルへ向かう。


「どれがいい?」

「あ、このパスタ食べたいです」

「了解。他は?」

「あうー…、え、えびふらい」

風太が皿に乗せていくのを見て、汰絽はほあーと変な声を出した。
風太の動きがとても綺麗に見えて、歓声を上げたらしい。
それを聞いて、一緒に取りに来ていた杏は笑った。


「仮にも、この人御曹司だからね」

「え?」

「え? …なに、知らなかったのー?」

「…だから、あんなにいいマンションに住んでるんですね」

「あ、言ってなかったか?」

「言ってないです!! 風太さん、たまにずぼらになりますよね」

「悪い悪い。ほら、これぐらいでいいだろ。戻ろうぜ」

「うー」

風太に背中を押され、席に戻る。
それから汰絽はいただきます、と声を出した。
すると、それを聞いていた周りからもいただきます、と、声が上がった。
夏翔が驚いたように笑って、汰絽も同じように笑う。


「風太さん、みんないただきますしてますね」

「そうだな」

「ふふ、面白いです」

「おう。…たろ、口ついてる」

さっと口元についたソースが、拭われ、汰絽はあ、と小さな声を漏らした。


「…どうした? …あ、しっぽも食えよ」

「あ、はい…?」

こてん、と首をかしげてから、汰絽はエビフライのしっぽを口に放り込んだ。
だんだんと、メンバーのテンションが上がってきたのか、汰絽に絡んでくる人も増える。
楽しそうにそれに答え始めた汰絽は、先ほどの疑問もどこかに行ったようで、今度は、風太が汰絽が首をかしげたことに首を傾げる番だった。
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