幼い心

「…入りづらい」

秋雨とロイが玄関を開けてリビングをのぞいたら、とても入りづらい状況になっていた。
いつも通りの時雨と椿のスキンシップだが、今日はやけに甘ったるい。
見ていて胸やけしそうなぐらいだ。


「…俺らもいちゃつく?」

とか、いい笑顔で言ってくる秋雨に、ロイは握りこぶしをチラつかせた。


「時雨さんに、椿君を独り占めされるのはちょっと妬けちゃうから、入っちゃおう」

「お前ってホントに、子供好きだよな」

「好きだよ。椿君は特別に可愛いしね」

「それはわかるけどさ…、たまにも俺をかまってくれよな」

「はいはい」

とか、会話をしつつ、寒いのにアイスをセレクトした袋を持って、甘ったるい雰囲気のリビングに入った。


「ん、」

「なんだ、帰って来たのか」

椿が目をこすりながら起き上り、続いて時雨は少しだけ怪訝そうな顔をして2人を出迎えた。
その様子に秋雨は苦笑しつつも、椿が幸せそうなオーラを出しているのに目を見張る。
椿はいつもほわほわしているが、格段とほわほわしているように、秋雨は感じた。


「…まさか…」

「そのまさか。邪魔するなよ」

「しねーよ」

時雨がにまにまと笑う様子に、秋雨までにやりと笑ってしまった。
余程嬉しいのか、あの、時雨がにまにましている。
秋雨とロイは、呆気にとられながらも、ホットカーペットに腰をかけた。
それから、袋を手渡す。


「さむ…」

「いいだろ、あつあつなんだから」

「悪いな。…、椿、アイス」

「嫌みも通じない…」

秋雨から受け取った袋の中の中から、椿に選ぶように勧めた。
椿は、ソフトクリームを選んで、時雨はチョコレートのアイスを選んだ。
蓋を取って椿に手渡すと、ふにゃん、と笑顔を零す。


「うお…、今までにない笑顔…」

「アイス、ありがと」

ロイに頭を下げながら、礼を伝え、椿はアイスを口に含んだ。
ほんのりとした甘さが口の中に広がった。


幼い心 end
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