同じ気持ち

「椿…」

抱き上げて抱きしめれば、小さな体は震えていた。
優しく抱きしめて腕の中に包み込んでしまえば、愛おしい気持ちも一緒に包み込んでしまったようで。
時雨は必至に自分の気持ちを抑えようとしている椿に言葉をかけるのさえ、遅れてしまう。


「こっち向いて」

小さく囁きかければ、椿はびくびくと怯える様に顔を上げる。
涙でぬれた頬に口付けすれば、また涙が溢れ出した。


「椿、俺も好きだよ、椿のこと」

「…すき…?」

「うん。椿は、俺と同じ気持ちで言ってくれてるんだよね? …キスしたいとか」

「キス…?」

「そう、キス。お帰りのキスとか、ご褒美のキスとかじゃなくて、…シンデレラも白雪姫は王子様からキスを貰うでしょ?」

「うん、」

「そういった、特別な人にするキス、」

「うん、」

「ねぇ…椿、そういうキス、してほしい?」

優しい声で、そう囁けば、椿が一気に顔を赤くした。
その赤さに時雨は少し驚きながら、椿の髪を梳く。
それから椿の答えを待つように、やんわりと額、目、鼻先、頬、と口付けを落としていった。


「、して…」

と、小さく呟かれたのを聞いて、時雨は椿の顎を捕え、唇を触れさせた。
時雨は何度も啄ばむ様に椿に口付けた。
甘い口付けに椿の体が震えたことに気づく。


「ん、ふ…」

小さく洩れる声に、時雨は唇を離した。
椿のもう一度軽くキスを与えてから顔を離す。


「…椿」

名前を呼べば、頬を赤く染めた椿が顔を上げる。
そんな椿を抱きしめて、あやす様に背中を撫でた。


「キス、しちゃったけど…、椿は俺の恋人になってもいいの?」

「…ん、恋人がいい」

「うん、良かった…。椿、好きだよ」

そっと囁かれる、好きという言葉に、椿はどうしようもなく心が温かくなった。
恥ずかしくなってきて、時雨から顔をそむける。
それを許さない、とでも言うように、時雨は椿の頬に手を添えた。
それから、その手で時雨は椿の頭を撫でる。
椿もその手に答えるようにすり寄って、時雨の背中に手を回した。


「しぐれさんも、胸がきゅってなるの?」

と、椿が気になったのか、きゅって言うときに眉間もきゅっとしながら時雨に聞く。
時雨はその様子に笑いながら答えた。


「俺もきゅってなるよ…、椿と、同じ気持ち」

「同じ気持ち…」

「そうだよ」

「うれしい」

椿がほわって効果音が付きそうな笑顔を浮かべた。
その笑顔に時雨も和み、そのまま2人でごろん、とホットカーペットの上に寝転がる。
時雨は椿の頭の下に腕を置き、額に口付けた。


「寝室の暖房も付けてないから、もう少しここでごろごろしてようか」

頷いた椿に時雨はテレビを点けて、寝転がったまま眺めた。
椿の頭の下にある腕とは逆の腕で、椿を抱きしめる。
椿の体温が時雨に移り、同じぐらいの体温になった。
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