区切り
秋雨とロイが席に着いてから夕食が始まった。
昼食がイタリアンだったため夕食は和食。
「さぁ、眠たいの?」
ロイの言葉に、秋雨があーうん、と曖昧な返事をした。
それに時雨は呆れるように溜息をつき、安曇は面白そうに見守っていた。
「眠たいなら、さっさと食べて、部屋戻ればいいじゃん」
「いやー…、眠たいんだけど、ここにいたいっていう…矛盾が…」
「だらしない」
「しかたないでしょーが…。なんか、今日すっごく眠いんだよ」
「意味分かんないから。あ、ごはん食べたら安曇君送るから、車出すよ」
「え!?」
「なに、目覚めたの?」
「いや…2人っきりっていうのは…でも、あれだし」
と、もぞもぞと喋る秋雨にロイは苦笑して、秋雨の頬を軽く叩いた。
秋雨はそれで目が覚めたのか、俺も行く、とだけ言って食事のペースを速める。
先に食べ終わった時雨が食器を運ぶのに、椿も食器を運んだ。
今日は完食できて、少し嬉しい。
続いて、ロイや秋雨、安曇も食べ終わり
食器を運んで出かける支度を始めた。
先に終わった安曇が時雨のところに来て、頭を下げる。
「いきなり訪ねてすみませんでした。…それから、自分の気持ちに区切りをつけることもできて、ほんとに、感謝してます。ありがとうございました」
「いや、こちらこそ。ごめんね。綺麗事しか言えなくて」
「それでも、救われました。…椿君も、ありがとう」
椿が頷いたのを合図と取って、秋雨が安曇を呼んだ。
玄関まで見送りに出れば、安曇が最後に椿の頭をなでる。
もう一度だけ時雨に礼を伝え、家を出た。
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