ただいまのチュー

「椿、お帰り」

椿が靴を脱ごうと顔を下げたら、時雨の声が聞こえた。
そっと顔を上げれば、時雨が立っている。


「ただいま?」

「そう、ただいまだよ」

「ただいま」

椿は急いで靴を脱いで、中に入った。
それから、椿に視線を合わせる。


「ただいまのチューは?」

「ん、」

時雨がにっこりと笑うのに椿は頬が赤くなるのを感じながら、時雨の頬にキスした。
時雨は満足したように、椿の頬へキスを返す。
それから、リビングに行こう、と手をつないだ。
リビングへ着いたら、カーペットに座る。
椿は上着を脱ぎながら、時雨に楽しかったか聞かれて答えた。


「チョコレートおいしかった?」

「うん」

「良かったね」

「うん、すっごく、楽しかった」

「そう。今度は、俺と出かけようね?」

嬉しそうにこくん、と頷いた椿の髪に、時雨はそっと口付けた。



「時雨さん、椿君、夕飯できましたよ」

安曇が呼びに来たから、時雨と椿はテーブルに向かった。
ロイは秋雨を呼びに行ったのか、まだ席についていない。


「安曇君、楽しかった?」

「はい、楽しかったです。良かったです、こうして、気持ちを整理することができて。ありがとうございました」

「いいえ、こちらこそ。こんなこと言うのなんだけど、これからも遊びに来てくれないかな。椿、年の近い知り合いはいないから」

「わかりました。お役にたてるなら、遊びに来させてもらいます」

「よろしくね」

と、安曇と時雨が会話していたら、寝起きだろう秋雨がやってきた。
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