安全運転

「すみません、何も考えずに買い物して…」

「いいよ、気にしないで。あ、安曇君、何か飼ってるの?」

「あ、犬と猫と兎…と蛇を少々」

「それ、少々って言わないよ…ん? なんで蛇?」

「妹が好きなんです」

「妹が? …変わってるんだね」

「変ですよね。自分の妹なのに、ちょっと気持ち悪いですね」

「…あはは。…全部1匹ずつ?」

「いえ、2、3匹ずつです」

安曇の荷物を3人で分けて持った。
それから、そろそろ帰ろうか、と車へ向かう。
車に着けば荷物を乗せて、一息吐く。


「あ、安曇君、今日帰るんだよね?」

「はい。マンションの近くのコンビニに迎えを呼ぶので」

「そっか。あ、夕飯食べていきなよ」

「いいんでしょうか?」

「かまわないよー。ね、椿君?」

椿は急に振られたが、こくん、と頷いた。




車を幾分か走らせたところで、ロイの携帯が鳴った。
鞄から取り出して、確認すると時雨からで素早く椿に渡す。


「時雨さんからだよ」

電話をそっと耳に当てたら、時雨の声が聞こえた。


「し…、しぐれさん」

緊張からか、少しだけ手が震えた。


『椿…? ロイは運転中か?』

「うんてんちゅう…しぐれさんは?」

『今日は早く上がれたから、家にいるよ』

時雨の声はいつもより優しい。
その優しさに、椿は胸が痛くなった。


『椿の様子が気になって、ロイに聞こうかと思ったんだけど、大丈夫そうだね』

「うん」

『椿、ロイに安全運転しろよって伝えて…。じゃあ、家で待ってるから』

「うん、」

電話が切れたのに少し切なくなって、椿はロイに携帯を渡した。
それから、ロイに伝えて、と頼まれた伝言を口にする。


「あんぜんうんてん、しろって言ってた」

「安全運転? …しっかりしてるからね。安心して」

「うん」

ロイが苦笑したのを見て、椿は窓に視線を移した。
辺りが暗くなってきて、星が出てきている。
上の方を見れば、月が綺麗に輝いていた。


「安曇君、荷物車に置いたままでいいからね。帰るとき、コンビニまで送るから」

「ありがとうございます」

ロイと安曇の他愛ない会話を聞いていたら、すぐに家に着いた。
椿はエレベーターの中で電話での時雨の声を思い出す。
自分の顔が赤くなっているのを感じ、そっと頬に触れた。

「ただいま帰りましたー」

「お邪魔します」

椿は後から入ろうと、後ろの方で待った。
先に入っていくロイは直ぐに中に入り、夕飯の支度しますね、とキッチンに向かう。
安曇もそれに続くように入って行った。
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