イタリアン
「あ、そう言えば、お昼まだだったね」
「そうですね、どこ入りますか?」
「ん? そこら辺のイタリアンはどうかな?」
ロイがそこら辺と指さしたところへ視線を向ければ、綺麗な店がいっぱい並んでいる。
「いたりあん?」
「食べたい? パスタとか、ピザとかあるよ」
ロイの言葉に頷いて、3人の昼食はイタリアンに決まった。
ウェイターに案内された席に着くと、安曇が椿にメニューを渡した。
ロイはもう一つのメニューを眺めていろいろ考えている。
それから、はっと顔をあげて椿を凝視した。
「そういえば、椿君風邪ひいたんだよね? …今更なんだけど、大丈夫?」
大丈夫、と頷けば、ロイは安心したように頷く。
それを見て、安曇がかすかに笑った。
「どれ食べたいですか?」
「…ぱすた」
すっと指したのは一番安いパスタで、椿が遠慮していると思い、ロイが別なのにしなさいと伝えた。
安曇はロイの苦笑に笑って、椿に本当に食べたいのを選んで、という。
「ぱすた…と、あいす」
今度、指さされたのは、先ほどのパスタとその脇に書かれていたデザート。
それにロイはしぶしぶ、と納得してウェイターを呼ぶ。
「椿君、安いのって遠慮した?」
「えんりょ…? ぱすた、ダメなの?」
「無自覚か、ううん、なんでもないよ。後でチョコレート買ってあげるね」
「ロイさん、ありがと」
「ううん、遠慮しないでね」
と、噛み合わない会話をしながら、料理が運ばれてくるのを待った。
食事を済ませ、店を出てから3人は適当に歩いた。
安曇の服を摘まんで歩き、人込みにさらわれないように歩く。
「椿君のチョコレートも買ったし、あとはなんか見たいのある?」
「いぬ」
「…犬?」
椿が急に発した言葉に、ロイは首をかしげた。
椿が指さした方向には子犬や猫、兎がたくさんいる。
ショッピングモール内のペットショップ前だった。
見ていこうか、と3人は店内に向かう。
「椿君、子犬の隣にいるのは子猫だよ」
「ねこ…、チェシャねこ」
「それはちょっといないかな」
とか、話していたら、安曇がちょっと見てきていいですか、と店内に入っていく。
向かって行った先はドックフードやキャットフード、首輪が売られていた。
「安曇君、何か飼ってるのかな」
ロイの言葉に椿はこてんと首をかしげて、安曇が戻ってくるのを待った。
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