食事
「…」
「…なにこれ」
帰宅してきたロイと秋雨は視線を合わせた。
この2人がなにこれ…といった理由は、椿と時雨にあった。
いつも非常に仲がいいが、それがいつも以上でべたべたしている。
何かがあったことは2人にはすぐわかった。
椿と時雨は先に夕飯を済ませたらしく、リビングでテレビを見ている。
が、その2人の距離が近い。
時雨の足の間に椿は腰を掛け、時雨は椿の腹に手を組んでおいていた。
「あ、秋雨、夕飯そこに置いておいたから。俺は部屋にいるよ」
と、さっさとロイが逃げていくのを、秋雨はああっと叫びながら見つめた。
その声に時雨が顔を秋雨のほうに向ける。
「あ? お前帰ってたのか」
「まあねー。っていうか、どうしたの。その格好」
「は?」
「いや、気づいてないならいいんだけど…」
お前等、おかしいよ
秋雨はその言葉を心にしまい、さっさと夕飯を食べてロイとコンビニにでも行こう…と、箸を進めた。
「椿君、朝ご飯食べたら食器洗っといてくれる?」
朝、椿はロイの作った朝食を食べながら、こくん、と頷いた。
食器を運んでいくロイの後ろ姿を眺めながら、スープを飲む。
スープは椿も手伝ったオニオンスープ。
ロイが椿の隣を通り過ぎるのと同時に、時雨がダイニングに入ってきた。
「今日はオニオンスープか」
「昨日、椿君が熱心にレシピを眺めてましたから」
「椿が作ったのか?」
「少し、手伝ってもらいました」
「そう、えらいね」
時雨がそう褒めながら、椿の隣に座り朝食を取り始める。
椿はデザートに取り掛かっていた。
「椿、今日早めに帰るから、勉強しようか」
隣で頷く椿に、時雨はぽんぽん、と頭をなでてやった。
「時雨」
秋雨に声をかけられて時雨は洗面所に向かっていた足を止めた。
いつになく真剣な顔をした秋雨は、椿のほうに視線を寄せている。
それに時雨は眉を寄せ、低く唸るように声を出した。
「なんだ、御託なら聞かない」
「御託って…、まあ、お前から見ればそうなんだろうけど…」
「椿のことだろ」
「まあ、関係してるって言えば、関係してる」
「意味がわかない。言うならはっきりと言ってくれないか」
時雨が痺れを切らして秋雨を睨みつけると、秋雨はため息をついて話し出した。
「明日、安曇が来る」
「安曇? …なんで」
「知らねえよ。まあ、昨日、ここに来てたみてえだけどな」
「まさか、椿のこと…」
「ああ」
時雨が唖然としたのを見届けて、秋雨はがんばれ、と呟いてその場を去った。
本当の居場所 end
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