ネックレス

売店に着き自動ドアをくぐると、中はとても暖かかった。
広くはないが落ち着いた和風の内装で、少し驚く。
今まで見てきた売店がほとんど洋風で、何となく明るすぎだと思っていたため、とても好感を持てた。


中を進むと、カフェと書棚がある。
その隣にはこじんまりとした店が入っていた。
会計所には、若い、着物を着た男が座っている。
その男はこちらに気付いたようで、抑揚のない声で話しかけてきた。


「いらっしゃい。隣のカフェは休みでして、すいませんね」

「そうですか。カフェは良いです。」

「そうですかい。ここのカフェ味はいいんですよ、店主はあれなんですがねえ…。あ、どうぞ、ごゆっくり」

男の言葉に、2人は店のほうへ進んだ。
真ん中の古風な木棚に、和をモチーフにした小物が置いてある。
他の棚には、普通の売店に売っているようなものが置いてあった。
脇のほうには、新しい自販機が置いてあり、それがまったくこの店の風貌に合っていない。


「このネックレス…」

時雨はふと目に入った和風のネックレスを手に取った。
鎖の先に、椿を模った硝子のネックレスで、薄紅色に塗られた硝子がなんとも綺麗だ。


「椿に似合うね。…買って行こうか」

時雨はそれを小物入れにいれ、同じデザインの指輪も入れた。
椿がこてん、と首をかしげるのを見つめ、お揃いだよ、と笑いかける。


「指輪は俺の、ネックレスは椿のだよ。…あぁ、ロイと秋雨のお土産も買わなければいけないね」

と言うと、椿はついっと指を差した。
指の先にあるのは、黒地に真っ赤な椿のキーホルダー映えたペンケース。
隣には、ブックカバーもある。
いいね、これにしようかとそれを手に取り、会計所へ足を進めた。
椿は先を歩く時雨に、小走りに歩き時雨の手を握った。
それに驚いた時雨は、思わず足を止める。


「どうした…?」

どうした、と時雨の問いかけに、椿は首を振って答えた。
なんでもない、とでも言いたいのだろう。
時雨はそれを察して、椿の手を強く握り会計所へ歩んだ。



「有難うございました、またお越しください」

店主の抑揚のない声に、ああ、と小さく答えて、2人は店を後にした。
時計を見ると、優に四時を越している。


「昼、食べるの忘れていたね。何か食べたい?」

少し、と指で時雨に伝えると、椿は時雨に寄り添った。
店の中はとても温かかったが、外はかなり寒い。


「そろそろ、帰ろうか。途中のパーキングで何か食べよう」

頷く椿に、時雨は行こうか、と声をかけて歩み始めた。
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