温かい格好で
椿は時雨よりも先に目を覚ました。
昨日、時雨に頭を撫でて貰っている内に眠ってしまった。
時雨がベットまで運んでくれたようだ。
椿は時雨の腕の中で身動きをとる。
椿が動いたことによって、時雨は目を覚ました。
「…おはよう、椿」
声を掛けられた椿は、こくんと頷いた。
時雨はその様子を確認して起き上がる。
腕を伸ばして伸びをしてから、椿の頭を撫でた。
「服を貸すから、着替えなさい」
時雨はタンスからVネックのセーターを出し椿に渡す。
頷いた椿はいそいそと着替えて時雨の後を歩いた。
「ジーンズ。サイズが合わないよな…」
「おはー、時雨、ん? ジーンズならロイのは?」
「いや、サイズが合わない…」
時雨の困った様子に、椿もおろおろとした。
そんな2人に、秋雨が少し考えて、閃いた、と顔を明るくする。
「椿ちゃんなら、そのままでもいけると思うぜ。身長差でセーター膝丈だし」
「…いや、それは椿が嫌がるだろ…」
「椿ちゃん嫌そうじゃねえよ?」
「…嫌だったら、良いんだぞ? 椿」
と、問いかけると、椿はふるふると首を振った。
それから、あまった袖をまくって時雨に笑いかける。
秋雨は、だろ、と笑うと、部屋から出て行った。
「ッ…、すぐにジーンズ買うから、悪いけど我慢してくれ…」
「椿ちゃん流石に寒いから、上着とマフラーと靴下貸してあげる」
秋雨が再度戻ってきて、椿の細い腕にたくさん置いた。
有難うございます、と口をパクパクと動かす。
秋雨はいーえ、と笑って、もう一度部屋から出て行った。
「じゃあ仕事宜しく、秋雨」
「おう。あ、あそこの店ならやってるだろうから、服買ってから行きな」
仕度の終わった2人は、部屋を出て秋雨に礼を伝えた。
それからロイと秋雨にあいさつをして、玄関へ向かう。
「椿、行くか」
時雨は椿の手を引いてマンションを後にした。
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