君の隣に-靖臣視点-
放課後。
帰ろうと鞄を手に教室を出た所で、名前を呼ばれた。
立ち止まると階段を登ってきたらしい友人が慌てて走ってくる。
「どうしたんだ? そんなに慌てて」
「倉沢? 3バカが屋上にっ」
息を切らしながらも屋上へ行けと言う友人。
「そんなに慌ててどうした?」
「良いから早くっ! あの子がどうなっても良いのか!?」
…突き飛ばされた勢いのまま僕は走り出した。
さっきの友人はヒロ君の載ってる卒業アルバムを貸してくれた友人だ。
さっきまで別の棟にいた友人は屋上であの子の姿を見たらしい。
階段を駆け上がった勢いのまま扉を開け放つ。
周囲を見渡すとフェンスの角に3バカの後ろ姿が見えた。
奴らの身体の合間から細身の身体が見えた瞬間。
その場から一気に走り寄り、一番手近に居た奴の襟首を掴んで引きずり倒した。
傍らにはヒロ君の学ランが落ちている。
1人消えた事に気付かせない内に、ヒロ君へ手を伸ばしにやけている奴ら2人の頭同士を無理やり掴んで引き合わせ、問答無用でそのままぶつけた。
割と大きな音はしたが、力は加減した。
脳震盪程度で暫く大人しくなってる程度だろう。
「…ひっ!」
最初に引き倒した奴が僕に気付いて顔色を変えた。
「僕に喧嘩売ったんだよね? ちゃんと最後まで責任取りなよ」
答えは聞かずに腹に一発蹴りを放つ。
視線を感じて前を見ると、ヒロ君が僕を見ていた。
戸惑うような表情に違和感を感じた時、ヒロ君の指が動いて目許に触れた。
「…眼鏡が」
どうやら何処かに落としたみたいだ。
ヒロ君のシャツは羽織っているだけの状態だ。
僕は彼の手を頬に残したまま、黙々とシャツのボタンを留めていく。
そうして、ヒロ君の手が離れたタイミングで学ランを拾う。
拾った先に見覚えのある財布を見つけ一緒に拾い上げた。
軽く埃を払ってから学ランを羽織らせる。
そうしてから、彼の手首を何時もより強く掴んだ。
…何処かぼんやりしたような顔で僕を見ていたヒロ君が不思議そうに僕を見る。
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