君の隣に-紘視点-

それは突然だった。
乱暴に扉が開いたかと思ったら知らない三人組が屋上に入ってきた。

金髪に染めた髪やだらしなく着崩した格好からしても真面目な生徒なんかでは無いだろう。


「あっれ〜? 噂のコ発見〜」

「本当だ。倉沢のお気にって奴?」

彼等はゲラゲラ笑いながら近付いてくる。
嫌な空気を感じて彼等から離れようとしたけど、反射神経の良い1人に捕まってしまった。

「おっ! …細い手首だな〜」

「へえ? 割と綺麗な顔してるな」

それを皮切りにニヤニヤした奴らの手が伸びてくる。
背にフェンス、前と左右に囲まれ逃げ場を無くしていた。


「噂って何」

返事なんか期待してなかった。
でも。あっさりした声がすんなり返ってきた。


「倉沢が可愛いオモチャ見付けたって噂だよ」

…倉沢? オモチャって俺の事なのか?


「倉沢なんて奴知らない」

そう言いながら解ってしまった。
…オミは倉沢と言うのだろう。
やっぱり俺は彼の遊びの対象だったんだ。


「何言ってんだ。毎日倉沢と会ってる癖に」

「…オモチャかぁ。さぞかし可愛がって貰ってんだろ?」

「偶には俺達が遊んでやるよ」

ニヤニヤした奴らは俺の学ランを剥いでポケットから財布を取り出した。
それをズボンのポケットへ移して更に俺のシャツへ手を掛けてきた。

あの優しさも面倒見の良さもオモチャに対しての物?

そうだよな。
頭良くて容姿も良い奴が好き好んで男なんか構う筈がない。
そんな現実を思い知ったら、何故だか脱力してしまった。
抵抗すら億劫に思えてきた。こいつらも別に殺しはしないだろう。

…ただ俺は。

思ったよりオミを気にしていたみたいだ。
聞き慣れてきていた、低いけど響く声も。
撫でてくれた大きな手も。
多分、いつの間にか気付かない内に真昼より…想いを傾けていたようで。

俺は現実を見たくなくて眼を閉じた。
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