片恋

Twitterでお付き合いをさせていただいている、菜月さんからいただきました。
黒薔薇の庭で(さよなら、僕の故郷の青い瞳、出会いの欠片)に出た、
真昼の親友であるヒロ君こと、蜂江紘(はちのえひろ)と、
フォロワーさんの生み出していただいた、オミ先輩こと倉沢靖臣のお話です。
とても繊細で、きゅんっと、来るお話です。
・片恋
・気の隣に



片恋


バイト中の店内。
低い歌声が薄い扉越しに聞こえてきた。

…彼の声だ。

ゆっくり聞きたいけど僕はこれから、手にした料理を奥の部屋へ運ばなければならない。
急いで注文の品を届け、今度はゆっくり戻る。
受付に程近い部屋から聞こえてきた歌声は、彼の物では無かった。
低すぎないその歌声は他の部屋のものと違って小さい。
いつも一緒に来る彼の友人が歌っているのだろう。
気になる彼は友人までが歌が上手だ。
…とても叶わない。
諦めて見ているだけの僕の耳にも届いたその歌声は優しくて。つい一歩を踏み出したくなる
バンドをしていることは知っている。
歌が好きな事も。
だけどそれだけ。
僕はカラオケ店のバイトで彼は客、それだけ。
声など掛けたら来て貰えなくなるかも知れない。

僕は振り切るようにその場を後にした。


end

彼→ヒロ君
小柄な友人→真昼君
語り手はカラオケ店バイトの高校生
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