君の隣に裏話-桜庭視点-
放課後の校内。
人気がすっかり無くなった教室。
静寂を破るような勢いで、扉を乱暴に開けて入ってきたのは倉沢。
声を掛けようかとも思ったけれど彼は1人じゃなかった。
倉沢の強引さに目を丸くしているというよりは、どこかぼうっとした表情の彼を俺は良く知っていた。
…弟の同級生で、バンドをやっているという子だ。
俺は彼らとすれ違いになるようなタイミングで教室を出て屋上へ向かう。
気は進まなかったが、携帯で委員長にメールを送ると、予想通り直ぐに返答がきた。
…正直いえば面倒臭い。これから倉沢の暴れた後始末をしなければならない。
今回被害者になってる3馬鹿。場合によっては彼らを病院へ連れて行かなければならない。
…屋上へ繋がる戸を開ける。視界に入ったのは、転がってる生徒三人と委員長だけだった。
俺はポケットから手帳を取り出す。
「桜庭。こいつらの問題回数は?」
「全員…通算五回」
「停学止まり?」
俺が確認の為、メモのページを捲っていると委員長の手首が俺を掴んだ。
「そうか。もう猶予は必要ないな。書類作るぞ」
倒れてる生徒を放ったまま委員長が言い切った。
「良いのか、これ?」
3馬鹿を指すと委員長は冷たく彼等を見下ろした。
そして。
「仏も三度までしか助けないんだ。知るか」
逆らうと更に面倒だから大人しく付いていく。
…手首も痛いけどもう慣れた。
尤も、掴まれていない左手で携帯メールを立ち上げ仲間に回収は頼んだけれど。
そうでなければまた、警備員に見付かり大騒ぎになる。
「倉沢やっぱり腕っ節強いな」
楽しげに話す委員長の言葉を聞き流しながら俺は溜め息を吐いた。
倉沢は確かに腕っ節は強い。
だけど奴の最優先は今、あの腕を掴まれていた彼。
彼が最優先でなくなることは無いだろう。
それは、倉沢の腕っ節はあの彼の為だけに使われることを意味してる。
風紀に入れたい素振りの委員長の態度は、前からだけど最近増えたようにも思う。
倉沢は無駄だと何かの折に気付いてもらわないと厄介なことに成りかねない。
溜息を吐いて俺はパソコンに向き直った。
end
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