行ってきます

夜もいい具合になったころ、ふたりは寝室に入った。
ふたつ敷かれた布団のむくの入っているほうに汰絽が入る。
もうひとつの冷たい方の布団に風太は入った。


「あのさ、明日…」

「あした…?」

「病院、ついてきてくれないか?」

「…構いませんけど、」

「ああ、良かった。夏翔に車頼むか…」

風太が携帯を取り出して、メールを送る。
そんな風太を見て、汰絽は微笑んだ。


「春野先輩、嬉しそうですね」

「ああ。やっと親父にドヤ顔ができるからな」

「ドヤ顔するんですか」

「しません。まあ、親孝行しとかねえとな」

「そうですか…」

返信はすぐに来て、ふたつ返事だということを確認して閉じた。
汰絽がふあ、と小さく欠伸をしたのを聞いて、風太は寝返りを打つ。


「そういえば…、夏翔さんって…?」

「俺の…ダチか?」

「なんで疑問形なんですか」

「俺よりだいぶ年上だからな。まあ、先輩か」

「へえ…」

汰絽、と呼びかけたかところでトロンとした返事しか返ってこなくなった。
おやすみ、と声をかけて、目を瞑る。
すぐに寝息が聞こえてきて、風太も眠りについた。



「おせぇ」

「うるせぇ、我儘ぼっちゃん」

「たろ、むく、乗れ」

「はい、あ、お願いします」

「おう」

お昼に近づく頃、汰絽は玄関に着いた車に乗り込んだ。
風太と話す人を見る。
綺麗に金髪に染められた髪を眺めて、まじまじと顔を見た。


「…ホスト…さんですか?」

「いいえ違います」

夏翔の声を聞いて、汰絽がすみません、とすぐに謝った。
運転席に乗り込んだ夏翔は、エンジンをつける。
風太の隣に乗った汰絽は、膝の上に乗ったむくの頭を撫でた。


「おちびちゃん、名前は?」

「六十里汰絽です」

「つ、ついひじむく…」

「犬? そっちの小さい子はむくな」

「たろうではありませんよ、たろ、です」

「ああ、悪い。汰絽ちゃんな」

軽快に笑う夏翔につられて汰絽とむくも笑った。
さっきまで人見知りをした小さな子のように黙っていたむくも、夏翔の明るさに元気になってくる。


「病院までだよな」

「ああ、頼む」

「了解」

夏翔が風太を見て、軽く笑い、車が発車された。


ゆるふわ後輩 end
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