アイス
「ふにゃー…きもちかった…」
力の抜け切った声が聞こえ、風太は入口へ目を向けた。
タオルで髪を拭きながら入ってきた汰絽は一息つく。
むくと結之と3人でDVDを見ていた風太は再度テレビへ目を向けた。
「おかえり」
「ただいまです」
汰絽も風太達の座ってるソファーに近寄る。
むくがきらきらと輝く瞳で汰絽を見つめた。
「たぁちゃんっ、アイスたべてい?」
「いいよ。ちゃんと春野先輩にありがとっていってからだよ」
「はーいっ。ふうた、ありがとお! …たべてい?」
「どういたしまして。おう、結之もむくと一緒に取ってきな」
「うん、ありがと!」
むくと結之は嬉しそうに冷蔵庫へ駆けて行った。
そんなふたりに汰絽は嬉しそうに笑う。
「ふうたぁー、なにたべるー? たぁちゃんはー?」
そんな声が冷蔵庫のほうから聞こえてくる。
早く、早く、とせかされて、風太が笑った。
「たろ、何食うの?」
「え、っと、何があるんですか?」
「チョコとバニラと、フルーツの。フルーツのやつは、確かブドウとモモと林檎、オレンジだったか」
「じゃあ、僕、林檎いいですか?」
「おう。むくー、ブドウとリンゴなー」
「はあーい!!」
風太はむくに伝え終えてから、汰絽に向かってぽんぽんとソファーを叩いた。
頭にはてなマークを浮かべながら近寄ると、ぐいっと引っ張られる。
わ、と悲鳴を上げながら、座り込むと、風太は満足そうに笑った。
「あ、春野先輩、あの、」
「ん? なんだ?」
「お布団が」
「ああ」
困ったような表情の汰絽に首をかしげつつ、続きを促す。
「ふたり分しかなくてですね」
「お…、おう」
「むく、ゆうちゃんといっしょがいいなぁーっ。たあちゃん、ふーたっ、アイス!」
「お、ありがと」
汰絽の言葉に驚きながら、むくに頭を撫でた。
結之も戻ってきて、カーペットに座る。
むくはバニラで、結之はチョコレート味。
吸うタイプのアイスをちゅうちゅうしながら、DVDに夢中になっていた。
「その、」
「お前がいいなら、俺はお前と一緒に寝るけど」
と、言いつつ、封を切ったアイスを口に含む。
食べれば、と促されて、汰絽も袋を開け、アイスを食べた。
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