風見鶏の家

「じゃあ、汰絽、気をつけてなー」

「ん、よし君も、あと、えっと」

「今野杏だよぉ。あんでいいよ」

「あ、あん先輩? さよなら」

「ばいばいー!」

軽く挨拶を済ませ、汰絽はむくと結之と手を繋いだ。
杏は軽く歩きだし、好野を待っている。
好野は風太の元へ近寄った。


「は、春野先輩」

「あ?」

「…汰絽とむくちゃん達、よろしくお願いします」

頭を下げた好野に、風太は鼻で笑った。
それから、大丈夫だ、と一言告げて、少し先で待ってる汰絽達を追う。
好野も、そんな風太を見て、杏の元へ戻った。


「何をお願いしたの?」

杏のきょとんとした顔に、好野は苦笑する。
俺の大事な親友をお願いしました。
小さく答え、好野は笑みを浮かべた。



「春野先輩、ありがとうございます」

「いや、別にいいさ。家に帰ってもひとりだし」

「え?」

「ひとり暮らしなんだよ」

「へえ…そうなんですか」

「まあな。別に寂しいとか、不自由なことはないから楽」

風太の言葉に汰絽は風太を見た。
何も感じてなさそうな表情。
風太は結之を抱えて、肩車した。
それから、汰絽と手を繋いでいるむくの、空いてる方の手を繋ぐ。
嬉しそうににっこりと笑ったむくに、笑みを返した。


「…僕も、むくとふたりきりです」

「そうか」

「久しぶりの大人数です」

「そうだな」

風太の優しい声に、汰絽は小さく頷いた。
ゆっくりと歩いていると、小さな星が輝いているのが見える。
むくと結之が嬉しそうに星の歌を歌うのを聞いて、汰絽も小さく口ずさむ。
なんとも微笑ましい光景に、風太は小さく笑った。



「あ、ここです」

汰絽が足を止めて、風太も止まった。
結之を下ろし、家を見上げる。
洋風なレトロな家。
屋根には風見鶏がくるくると回っている。
汰絽やむくに似合った家だ。
風太はそんな風に小さな、それでいて温かい家を見上げた。
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