ふたりごはん

杏と好野のいないお昼。
ふたりは空き教室の中、ひとつの机で向かいあってごはんを食べていた。
今日も汰絽のお弁当は美味しい。
目の前でむぐむぐと食べている汰絽に思わず小さく笑った。


「うまい」

「ん、ありがとうです」

「明日、卵焼きだしにして」

「はい。少し濃いめにしましょうか?」

「おう」

杏と好野が居ないといつもより静かで、ふたりはゆったりとしたお昼を過ごす。
食べ終わって空になったお弁当箱を片づけてそのまま汰絽を眺めた。
自分の一口を二口に分けて食べる姿が、愛らしい。
何してても可愛いから惚れた欲目は恐ろしいな、と思いながら、風太は窓の外へ視線をうつした。


「そういえば、一外は?」

「よし君も今日と明日、お休みするそうです。杏先輩のお仕事見に行ってるみたいですよ」

「へえー、そうなのか。ふたりっきりだな」

「…っ」

箸を止めてじとっと見つめてきた汰絽に、風太はケラケラと笑う。
それから、早く食べな、とお弁当を食べるように促した。

汰絽が食べ終わってから、風太は椅子を横に向け壁に寄りかかる。
まっすぐ風太の方を見ていた汰絽は、風太の腕に手を伸ばした。
ブレザーの上からでも触れればわかる筋肉を楽しむ。


「セクハラー」

「よいではないかー」

「ははっ、たろ、鼻の下伸びてる」

「ふふー。風太さんの腕好き」

「筋肉?」

「筋肉ー」

教室の窓際の隅でのんびりと甘い時間を過ごす。
ぐっと身を乗り出している汰絽に笑いながら、キスをした。
ちょん、と触れるだけのキスに、汰絽は恥ずかしそうに視線を逸らす。


「がっこう、ですよ」

「誰もいないじゃないですか」

「もし見られたらびっくりされちゃいます…」

机に突っ伏した汰絽の髪にもう一度キスして、ぐりぐりと額を擦りつけた。
くすくすと笑いだした汰絽に、風太も笑う。



「あー、静かでもいいな」

「でも少しさみしいですよ?」

「まあ。…修学旅行中、寂しくなったらすぐに電話しろよ。まあ、お前がかけてこなくても夜にはかけるつもりだったけど」

「ん、電話、します。…僕、寂しがり屋さんですよ?」

「そうだったな」

汰絽が顔を上げたところで、もう一度キスをする。
柔らかな感触にもう少し、と舌先で唇を刺激すると、汰絽は駄目、と吐息のような声で呟いた。


「そろそろ時間か」

「はい。じゃあ、また放課後」

指先を絡め、ぎゅっと握ってから、ふたりは空き教室を後にした。
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