お出かけ

マンションを出ると、夏翔が車を停めて待っていた。
車に乗り込んでから、駅へ向かう。
夏翔が買ってくれたチャイルドシートに乗ったむくは、汰絽の手で遊んでいた。
数分車を走らせたところでついた駅は、風太と初めて二人だけで外出した時に使った駅だ。
夏翔にお礼を告げてから、3人分の切符を買う。
以前、夏翔がプレゼントしてくれた帽子をかぶり、むくは汰絽に抱きかかえられ改札をくぐる。


「むく、電車初めてだね」

「でんしゃ」

「黄色の線から、こっちに居ようね」

汰絽の腕から降りたむくは右手を風太、左手を汰絽が繋ぐ。
初めての3人での遠出に、そわそわしているむくは、汰絽の手をぎゅっと握った。
滑り込んできた電車に乗り込み、ボックス席に座る。
窓側に座ったむくは、靴を脱いで窓に張り付いた。


「隣町、行くんですか」

「ああ。…親父に、事故現場の場所を聞いた。そこに行こうと思う」

「…どうして?」

「行かなければいけないと思ったんだ」

窓を眺めるむくの姿を見ながら、風太はそう呟いた。
汰絽はそんな風太を見つめ、きゅっと拳を握る。
自分が抱えてしまった大きな寂しさ。
それを風太も一緒に抱えてくれるのかな。
そんな風に思ってしまい、罪悪感を感じる。
ぱっと、写真で見せてもらったあの光景が頭をよぎった。


「…それに、むくにちゃんと俺の気持ちをわかってもらいたい。…お前にも」

風太の言葉に、汰絽はこくりと頷いた。
それから深呼吸をしてから、汰絽は少しぎこちない笑みを浮かべる。


「僕も、ちゃんと、風太さんに僕の気持ちを知ってもらいたい」

「…ああ。お前も、むくも…悲しい思いをするかもしれない。それでも、俺はお前たちの寂しさも気持ちも、全部抱えるつもりだよ」

「…風太さんは、ずるいな」

汰絽の小さな呟きは聞かなかったことにする。
泣き虫な汰絽が泣きださないように、風太は笑いかけて汰絽の膝をぽん、と優しく叩いた。
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