むくと風太と

一緒に寝てもらってもいいですか。
汰絽にそう言われ、風太はむくを真ん中に挟み、汰絽の部屋で眠る。
わんわんと泣いたふたりは、すぐに眠りについた。
汰絽が時折鼻をすするのを聞きながら、風太は目を瞑る。
真ん中のむくの温かい体温を感じると、すぐに眠りについた。

カーテンから淡い日差しが入り込んできて、目が覚めた。
一番最初に起きたのは風太で、ダイニングに出た風太はテーブルにつき携帯を眺める。
淡い光の中、ぼんやりとしていると、なんとなく落ち着くような気がした。
今まで、自分の居た世界とは全く関係のなかった世界。
ようやく、そんな世界にも慣れてきたような気がした。

リビングからかたん、と音がして、風太はそちらへ視線を移した。
小さな影が入り込んで、むくが入ってきたことに気付く。


「…おはよお」

少し緊張したような声に、風太は優しく笑い、挨拶を返す。
駆け寄ってきたむくを抱き上げて、膝に乗せた。
それから、むくの頭を撫でると、むくは風太に抱き付いた。


「むう、好き?」

「ん? むくが好きかって?」

「むう…」

「ああ、好きだよ。俺は、汰絽に負けないくらいむくのこと大好きだからな」

風太の言葉にむくが嬉しそうに笑った。
むくは、お礼を言うようにちゅっと風太の頬に口付ける。
はは、と、笑いながら、むくの頬に返事をするように口付けた。
むくは嬉しそうに笑っている。
思わずほっとしてしまい、風太はむくをぎゅっと抱きしめた。


「今日は幼稚園お休みして、みんなで出かけようか」

「おでかけーっ」

「その前に、汰絽が起きてくる前に、朝ごはん作ろうな。お手伝いできるか?」

「できる!」

元気に返事をしたむくにいい子、と頭を撫でてから、ふたりはキッチンに立った。


「おはようございます…」

少し疲れたような声が聞こえてきて、むくと風太はリビングのドアに目を向けた。
入ってきた汰絽の表情は声と同じように疲れていたが、ダイニングのテーブルに並べられた食事を見て目を見開く。
机に並べられた豪華な朝食に、汰絽は思わず微笑んだ。


「おはよう、汰絽」

「おはよぉ」

足にぎゅっと抱き付いたむくにおはようのキスをしてから、汰絽はテーブルにつく。
むくもすぐに隣に座って、最後に風太が飲み物を持ってきた。
飲み物はアイスティーだ。
最近の肌寒さよりも、今日は少しだけ暖かいようだ。


「ふたりで作ったんですか?」

「ああ。むくはサラダの野菜ちぎってくれたんだ。後は、サンドイッチの具を挟んでくれた。な、むく」

「むう、えらい?」

「偉いねぇ。ありがとう。むくもお手伝いしてくれたんだね」

むくの頭をそっと撫でて、汰絽は嬉しそうに微笑む。
風太はそんなふたりの様子を眺め、ほっと息をついた。


「汰絽、学校に休む連絡入れておいたから、食べたら出かけような」

「はい。ごはん食べたら、支度します」

それからいただきますの挨拶をした。
コンソメスープと、こんがりと焦げ目のついたサンドイッチ。
むくが手伝ったシーフードサラダに、汰絽の大好きなアイスティー。
風太とむくの作った愛のこもった朝食に汰絽は微笑んだ。


「お、美味しいです」

「そっか。むく、成功したな」

こくりと頷いたむくは、にかっと笑みを浮かべた。
汰絽もそんなむくの笑みに、ほっとして心が落ち着くように感じた。
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