策士策に溺れる

ぎゅっと目を瞑ってカタカタと震える汰絽が可愛くて、思わず笑みが零れる。
自分の膝の上に置いている手をそっと汰絽に近づけた。
縮こまっている汰絽はそんなことに気付いていないようだ。


「ひ、」

「大丈夫か」

「ぎゃあっ」

「はは」

振り向いた汰絽はぽたぽたと涙を流している。
ひっひっと声を上げて、風太をきっと睨む目が可愛かった。
ああ、なんでも可愛いんだろうな、と思いつつ、汰絽を抱きしめた。


「ごめんな」

「ひどい、」

「ああ、ごめん」

蜂蜜色の髪に鼻先を埋めて、スンとシャンプーの香りを堪能する。
それから、汰絽の頭をポンポンと撫でた。


「横になるか」

「…ん、このまま、このまま寝たいです」

「ああ」

股の間に挟んでいた汰絽の背中を軽く押し、膝立ちになる。
汰絽はこてん、と横になった。
それから風太も同じように横になり、汰絽を後ろから抱きしめる。
何度も髪を撫でると、汰絽が身体を動かした。


「くすぐったい…」

「お前の髪、ほんと触り心地がいいな」

「そうですか?」

ぐいっと顔を隠した汰絽の頭を何度も撫でる。
可愛く可愛くて仕方がない。
自分の腕の中にいるのが、好きな相手だと思うと、余計にたまらなかった。

風太に抱きしめられて、少しだけ緊張して身体が動かせなかった。
なんだか、後ろにいる風太が違う人のような、そんな感じがしてしまう。
それでも、後ろの体温が心地よくて、幸せを感じた。
こんな風に誰かと一緒じゃなければ眠れない。
そう気付いたのは、最近だった。


「風太さん、あったかい…」

「そうか?」

「うん…」

「怖くないか、もう」

「見てないから…、音が少し怖いだけです」

「音量も下げとく。…寝れそうだったら眠っていいからな」

そっと目を瞑ると眠れそうだった。
スカッシュの香りが心地よい。
息がゆっくりになっていくのが感じた。
このまま寝れそうだ。


「ん…」

「お休み」

こくりと頷くのが見えた後、寝息が聞こえ始めた。
DVDを消して、汰絽に腕を回す。
ぎゅっと抱きしめ、汰絽の後頭部にキスをした。


「生殺しだな…。役得だけど」
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