熱く、苦しく

零れる吐息が、重なって、熱を灯した。
苦しいくらいの熱さに、目を閉じる。
閉じた瞼から涙が、ぽたぽたと…。
ぽたぽたと…。


Breath


「今日の授業つまらなかった。…さぁが教えてくれた方が絶対効率いい」

「…」

「さぁ? …九秋雨さーん?」

「あ、ああ。どうした、英」

九秋雨の通う高校と、路衣英が通う中学の間にある図書館。
本を借りて、ふたりは誰もいない図書室の一角にいた。
秋雨がぼんやりしていることに、英はムスっとつまらなそうな顔をする。
そんな子供のような表情に気付いた秋雨は小さく笑った。



「ごめんごめん。ぼんやりしてた」

「何考えてたの?」

「いや、お前、首のとこに痣があるから…」

「…き、気付いたの…? 大丈夫、いつものことだから」

「すぐに連絡しろよ」

「今度からそうするね」

英が軽く笑って頷いたのを見て、秋雨も頷く。
誰もいない図書室の片隅。
秋雨は鞄の中から何かを取り出した。


「それなに?」

「ん? なんか貰った」

「ふうん。…貰ったもの食べて大丈夫なの?」

「大丈夫だろ」

袋に入ったクッキーをひとつ、秋雨が口に運ぶ。
それほど美味しくもないのか、少しだけ眉間にシワを寄せた。



「さぁ、今日は何する」

「んー…」

「…ぼんやりして」

はあ、とため息をついた英をちらりと秋雨が見た。


「…っ」

「…さぁ? どうしたの、顔が…赤い」

秋雨の顔を覗き込む。
荒い息を吐く秋雨を心配そうに覗きこんだ。
黒ぶちの眼鏡をかけた英の瞳に、欲情を携えた秋雨が写った。


「…はな…ぶさ…」

くい、と首元を掴まれ、英は息を飲んだ。
唇に熱いものが触れた。
少しかさついたそれは、英の唇に噛みつくような熱さを分けた。
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